本年度はこれまでに作成したアクティブマイクロレオロジー光学系の補正とこれを用いた複素粘性率スペクトル測定法の評価を行った。水中でトラップした数ミクロンのポリスチレン粒子を駆動用のレーザーで強く捕捉し、そのレーザーの方向をAOD回折器によりを周期的に変化させることで、粒子位置を1Hzから5kHzの範囲で正弦的に振動させた。また、粒子位置は位置検出用レーザー光の回折を用いて検出した。この際、測定される両変位信号を4分割フォトダイオードにより電気信号に変換し、コンピュータ上で高速フーリエ変換(FFT)を行ない、その複素振幅を測定した。得られた2つの信号の振幅の比および位相差から、媒質の複素粘性スペクトル測定を1Hzから10kHzの帯域で行った。この際、機械的共振等によると考えられる、印加した振動とは異なる複数の周波数を持つ振動が観察された。このため、より精度の高い測定を行うためには信号検出法としてFFT法よりむしろロックイン検出法が有効であると考えられる。
本年度はこれに加えて粒子の3次元位置測定法としてコリメートされたLD照明による得られるホログラムを用いたホログラフィック顕微鏡の開発も行った。その結果、撮影されたホログラムからレーリー・ゾンマーフェルト回折理論を用いて3次元再構築像をデジタル的に計算し、その高い強度部分の重心位置から粒子の3次元位置を決定することが可能となった。今後、光ピンセットによる光駆動と高速度カメラを用いたホログラム観察を結合させた新たなアクティブマイクロレオロジー測定法への応用が期待できる。
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