研究課題
本研究の目的は、高解像度な天体衝突の数値計算を大量に実行しすることで、統一的かつ精度の高い天体衝突破壊モデルを構築することである.本年度は、衝突破壊の程度を示す衝突放出物総量の高精度なモデルを、多数の自己重力天体衝突の数値流体計算結果を用いて経験的に作成した。衝突放出物総量は、天体サイズ、衝突天体サイズ比、衝突速度、衝突角度に依存する。さらには、数値計算の解像度を決めるSPH粒子数にも依存することを昨年度我々が示した。大量の数値計算を行うことにより、これらのパラメータに対する依存性を明らかにした。得られた結果は以下のようにまとめられる。(1) 衝突放出物総量は、衝突エネルギーを2天体の質量和で割った、衝突のQと呼ばれるものの関数で与えられ、この関数が一般に上記のパラメータに依存する。また、衝突放出物総量が2天体質量和の1/2になるQをQ*という。我々の数値計算によると、衝突放出物総量を比Q/Q*の関数と考えると、その関数は、天体サイズ、衝突速度、解像度(SPH粒子数)には依存せず、衝突角度のみに依ることが分かった。これにより、Q*のパラメータ依存性を明らかにすることで、衝突放出物総量がシンプルなモデルで記述できる。また、Q*は比較的低解像度な数値流体計算で収束値を得ることができることも大きな利点である。(2) 様々な衝突破壊による平均的な効果として、衝突角度で平均した衝突放出物総量が多くの場合重要となる。(1)の結果より,衝突角度で平均した衝突放出物総量は、パラメータに依存しない、一般的なQ/Q*の関数となる。数値計算結果より、この関数を得た。特に、Q/Q*<0.5以下では、この関数はQ/Q*に比例するという簡単な形で書くことができることも示した。さらに、強度をもつ天体を記述するため、弾性体の効果を入れた数値計算も行った。その結果については現在まとめているところである。
3: やや遅れている
平成28年5月に数値コード開発のために東北大で雇用した学術研究員が急遽他大学に就職することになった。着任後も本研究のプロジェクトを継続して行ってもらったが、大学業務が多忙であったため、弾性体の効果を入れた計算のためのコード修正、数値計算の実行と解析、研究まとめに遅延が生じた。
弾性体の効果を入れた計算はほぼ終わっている。今後は、計算結果の解析とそのまとめの作業を期間延長により行う。それにより、国際学術雑誌への論文投稿や国内外での成果発表を遂行する。
平成28年4月末に数値コード開発のために東北大で雇用した学術研究員が急遽産業医科大学に助教として就職することが判明した。着任後も本研究のプロジェクトを継続して行うことを約束したが、就職先での業務が予期した以上であったため、計算コード修正、数値計算の実行と解析、研究まとめに6か月の遅延が生じた。
国際学術雑誌への2編の論文投稿や国内外での4回の成果発表を行う。そのための論文投稿料と旅費を支出する。
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (4件) 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 4件、 査読あり 8件、 謝辞記載あり 4件、 オープンアクセス 7件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 3件、 招待講演 3件)
Icarus
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