部分溶融が多結晶体の物性に与える影響は、これまで知られてきたような、メルトが生じたことによる直接的な影響に加えて、ソリダス直下の固体状態においても、減衰が顕著に増大し、また粘性の活性化エネルギーが顕著に増大することがわかった。しかも、融点で微少なメルトしか生成しない試料でもこの固体状態での変化は大きく、メルトによる直接的な影響を遥かに凌ぐ。本研究の成果は、上部マントルにおける地震波低速度域の存在を、メルトが非常に少ないことを示唆する地球化学の結果と整合的に説明するものとして重要である。本実験結果は、太平洋下上部マントルで実際に検出された融点直前の急激な速度低下をほぼ定量的に説明する。
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