研究課題/領域番号 |
26287110
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
見延 庄士郎 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (70219707)
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研究分担者 |
鈴木 立郎 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 総合的気候変動予測研究分野, 技術研究員 (10415995)
佐々木 克徳 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 講師 (50604815)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 地球温暖化 / 海面上昇 / 海洋大循環モデル / 領域海洋モデル / CMIP5 / 観測データ |
研究実績の概要 |
IPCC第五次報告書で使用された気候モデル出力のアーカイブであるCMIP5(Climate Model Intercomparison Phase 5)の二酸化炭素高排出シナリオ(RCP8.5)の結果を用いて,日本付近に水面上昇をもたらす風系の南北移動に加えて,海洋の熱の取り込みについて解析を進めた.熱の取り込みは黒潮域で強く,この要因もまた日本付近に大きな海面上昇をもたらし得ることが明らかになった.水平0.25度格子間隔のROMS (The Regional Ocean Modelling System)の海洋モデルを用いて,北太平洋西部に大きな海面上昇をもたらす3つのCMIP5モデルの高排出シナリオ実験結果に基づき,海洋ダウンスケールを20世紀後半と21世紀後半について行った.このダウンスケール積分では,20世紀の実験は観測およびデータ同化で得られた外力・境界条件を用い,21世紀の実験ではその20世紀の外力・境界条件に気候モデルの21世紀と20世紀の差を加えて21世紀の外力・境界条件を作成している. また水平1度格子間隔のROMSを用いて,20世紀の日本沿岸水位変動のメカニズムの解析を行い,1950年代の高水位は風の変動により生じていることを明らかにした.これは近年の熱・淡水フラックスによる水位上昇とは異なるメカニズムである. 海洋大循環モデルCOCOでは,海面水位上昇の評価精度を上げるため、海洋ネストモデルの海氷を含む淡水保存などの仕様変更を行い、JRA55による経年変動実験を行った。さらに比較データとして、北太平洋域の潮位計データの収集及び解析を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CMIP5の解析では,従来あまり積極的に取り上げられてこなかった海洋の熱の取り込みの効果についても解析が進んでいる.ダウンスケール実験はなお調整が必要ではあるものの,基本的な問題はクリアしている.日本の過去の沿岸水位を議論するうえで懸案となっていた,なぜ1950年付近に高水位が生じたのかについても,そのメカニズムを説明することができた.さらに,高精度推定が可能となるように改善した海洋大循環モデルCOCOによる,経年変動実験も行われた.これらの点から,おおむね順調に進展していると判断する.
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今後の研究の推進方策 |
CMIP5の複数モデル解析を続行し,今年度は新たに海洋中の3次元的な水温・塩分・密度・流速の変化と,それをもたらす外力との関係を調べる.これまではもっぱらRCP8.5のデータを解析してきたが,RCP4.5についても解析を行う.また,前年度に開始したROMSを用いたダウンスケール実験の数値計算を継続する.このダウンスケール実験の結果を解析して,日本付近および日本沿岸でどれだけの水位変化が生じるかを全球平均水位からのずれについて推定する.その際黒潮・黒潮続流など海流系の変化および海峡通過流の変化に注意を払う.一方水位上昇のメカニズムにより重点を置く数値実験として,CMIP5の将来予測実験で得られた北太平洋の代表的な大気の変動を外力として,海洋モデルCOCOを駆動し、将来の日本沿岸域及び周辺海域の海面水位上昇にどのようなメカニズムが重要な役目を果たすかを評価する.さらに前年度に領域海洋モデルROMSを用いて明らかにした北太平洋の大気場の変動が日本沿岸の水位変動に与える影響とそのメカニズムについて,COCOの結果との比較を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
逼迫するかと思われたハードディスクなどが効率的な使用で大きな出費を必要としなかったこと,スケジュールの関係からいくつかの成果発表を見送ったことなどから,次年度使用額が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
人件費・ハードディスクなどの物品費・成果発表旅費・研究打ち合わせ旅費などに利用する予定である.
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