研究課題
航空事故の多くは、ケルビン-ヘルムホルツ不安定波を成因とする晴天乱流によって発生すると考えられている。しかし、事故は気象観測データが不十分である上空の航空路上で発生しているため、晴天乱流の実態解明はほとんど進んでいない。グライダーはエンジンを持たないため軽量で気流の影響を強く受けるため、グライダー自体を感度の良い測定プラットフォームとして利用できる可能性がある。そこで、滝川スカイパークに設置した3次元走査型ドップラーライダーなどの複数のリモートセンサーの観測範囲内を、各種観測装置を搭載したグライダーで飛行することにより、晴天乱気流の実態解明を行った。観測範囲は地上から3㎞まで、飛行経路はドップラーライダーを中心に両方向に6 kmの範囲を端から端まで往復、あるいは円旋回しながら滑空した。2016年度は10回、基本的に晴天日に観測を実施した。グライダーによる気象要素やエアロゾル数濃度の測定結果は地上に設置した各種リモートセンサーによる大気の鉛直分布と整合的で、気象プラットフォームとしての有利性が確かめられた。機体の揺れの指標である水平と鉛直方向の加速度の高度分布を、ドップラーライダーで観測した大気の水平・鉛直構造と比較したところ、自由対流圏ではほとんど揺れがみられなかったが、大気境界層内では鉛直方向と水平方向の揺れには明瞭な相関が見られ、鉛直方向が水平方向よりも数倍大きく揺れることを定量的に示すことができた。また、サーマルの発達段階によっても、鉛直と水平方向の相関の強さや強度の分布に変化が見られた。さらに、大気境界層上端付近の狭い高度範囲で極めて大きな下向きの振動が度々見られた。強い乱れが発生した時の気温・湿度・エアロゾル数濃度の高度・時間変化を調べたところ、上空の空気の下向きのエントレインメントによって強い乱れが発生したことが明らかとなった。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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