研究課題/領域番号 |
26287119
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
齊藤 慎司 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (60528165)
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研究分担者 |
成行 泰裕 富山大学, 人間発達科学部, 准教授 (50510294)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 宇宙プラズマ物理 / 太陽風プラズマ / プラズマ乱流 / 計算物理 |
研究実績の概要 |
運動論的乱流は、イオンや電子の個々の運動が重要になるような空間および時間スケール中にあるプラズマ乱流として定義される。このような時空間スケール中の乱流は、プラズマ運動論が無視されるような磁気流体乱流から乱流エネルギーが供給されており、そのエネルギーは運動論的な物理を介して、プラズマ加熱や粒子加速に寄与していると考えられている。本研究ではプラズマ粒子の運動論を含めた大規模シミュレーションを行うことにより、イオンや電子が関わる特徴的なスケールより十分大きなスケールから、どのようにして運動論的乱流が形成および散逸していくのかについて研究を行っている。今年度は次のような成果を得た。 1. 有限振幅whistler波動の非線形散逸について 2. Whistler乱流中での自発的な不安定性の励起について。 1.については論文を執筆し、Physics of Plasmas (Saito et al. (2015) DOI: 10.1063/1.4926523)から出版している。この研究より有限振幅の長波長whistler波動は、磁気流体的な不安定性よりも十分短い時間で電子スケールの不安定性を励起し、長波長whistler波動の散逸に寄与することがわかった。この成果を背景に、イオンスケールでのwhistler乱流を再現した運動論を含めたプラズマ粒子シミュレーションを実行し、自発的な不安定性の励起に伴う散逸過程に注目した解析を行った。これによりwhistler乱流中において電子スケールでの静電波動が励起すること、whistler乱流によるイオンの挙動を起源としてイオンスケールでの不安定性が励起し、whistler乱流散逸に寄与していると考えられるような結果が得られた。これらがどのようにしてwhistler乱流の散逸に寄与するのかについて今後研究を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
名古屋大学でのスーパーコンピュータcx400上において、本研究の中核となる粒子シミュレーションは問題なく動作しており、その計算による研究成果もいくつか挙がり始めている。このため、現状ではおおむね順調に研究は進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
現在解析を進めている、whistler乱流中でのイオン・電子スケールでの不安定性の励起プロセスについて研究を進め、年内の論文化を目指している。また、共同研究者が解析を行っているMMS衛星の結果との比較を進める。特に磁気圏シース領域に存在すると考えらているミラーモードという波動に満たされたプラズマ乱流ついて、イオンスケールから電子スケールまでの物理を粒子シミュレーションによって再現し、その励起・散逸過程について研究を推進する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初次年度に実施すると考えていた共同研究者の招聘が、先方の都合により本年度を跨ぐこととなった。それに対応するため前倒し支払い請求を行ったが、その後、当初計画していた国外旅費を別経費から支出することになったため、次年度使用額が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額は前倒し支払いが承認された額とほぼ同額となっている。翌年度以降の使用額にほぼ変更は無いため、使用計画については変更は無い。
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