研究課題/領域番号 |
26287119
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
齊藤 慎司 名古屋大学, 大学院理学研究科, 特任准教授 (60528165)
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研究分担者 |
成行 泰裕 富山大学, 人間発達科学部, 准教授 (50510294)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 宇宙プラズマ物理 / 太陽風プラズマ / プラズマ乱流 / 計算物理 |
研究実績の概要 |
本研究ではプラズマ運動論が重要となるような空間および時間スケールでのプラズマ乱流の非線形プロセスに注目し、特に波動散逸や不安定性に伴うプラズマ粒子の加速および加熱プロセスについての研究を行っている。運動論的性質が重要になってくるようなプラズマ乱流を運動論的乱流と呼び、これより十分空間・時間スケールの大きな磁気流体近似(MHD)プラズマ乱流から、乱流カスケードを経てエネルギーが供給されていると考えられている。MHDプラズマ乱流から供給されたエネルギーをもとにプラズマ運動論的性質を持つwhistler波動やkinetic Alfven波動が生成されていると考えられており、本研究ではこれらのうちのwhistler乱流に注目し、その非線形発展について調べている。 今年度はMHDスケールに近いwhistler乱流の非線形発展についてプラズマ粒子シミュレーション手法を用いて計算を行い、以下について新しい知見を得た。 [1] イオンスケールwhistler乱流からより小さいスケールへカスケードした波動はよりintermittentな性質を強く持つ。 [2] whistler乱流の散逸に伴い、これまで考えられてきた線形的波動の共鳴散乱プロセスのみならず、whistler乱流のintermittentな性質に起因した局所的な粒子散乱プロセスが存在する。 [3] 有限振幅のwhistler波動は線形的な散逸だけではなく、不安定性を介した非線形的な散逸を受ける場合がある。 これら今年度の成果および昨年度後半に得られた研究成果について、日本地球惑星科学連合(2017年5月)の会議およびカナダ・モントリオールで開催されたURSI国際会議(2017年度8月)において口頭発表、アメリカ・ニューオーリンズで12月に開催されたAGU Fall Meeting 2017においてポスター発表を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2017年度中に運動論的プラズマ乱流・波動に関する論文2編がPhysics of Plasmasより出版されている。また、これに加えて今年度、運動論的プラズマ乱流の統計的性質に関して新たな知見が得られ、2018年度前半中に成果発表として論文投稿を予定している。この研究成果は当初予想していた研究成果以上の進展が期待される。
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今後の研究の推進方策 |
運動論的プラズマ乱流、特にmagnetosonic-whistler乱流に注目して、その統計的性質について研究およびシミュレーションデータ解析を進める。また、これによるプラズマ粒子の加熱・加速プロセスについての詳細を解析し、magnetosonic-whistler乱流の統計的性質の1つであるintermittencyとプラズマ粒子へのエネルギー輸送プロセスについて理解を深める。この成果については年度内に論文として出版し、平行して国内外の学会・会議等で成果発表を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度内に投稿予定であった論文について、研究内容について新たな知見を得られ、データの追加解析を実施していたため論文投稿に遅れが生じた。また、当初予定していた大規模シミュレーションの実行について、今回の新たな知見をしっかり理解した上でのアプローチが必要になると考え、スーパーコンピュータを用いる大規模計算の実行を30年度へ持ち越した。そのため、論文投稿料および計算機使用料が未使用分として発生した。 30年度の研究計画については、現在執筆中の論文を投稿し、この成果を踏まえたスーパーコンピュータを用いた大規模シミュレーションを実行する予定である。また、これらの研究成果については国内外の学会、国際会議等で口頭およびポスター発表を行う予定である。これらについて、投稿料、計算機使用料、成果発表旅費として研究費を使用する。
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