研究課題
コーラス放射による相対論的電子フラックスの形成過程について数値グリーン関数法を使って再現することに成功し、その詳細な過程を解析して論文を出版した。初期分布として10-30keVのエネルギーと10-90度までの赤道ピッチ各で一様な電子フラックスが継続的に磁気圏に注入されると想定して、10keVから6MeVまでのグリーン関数との畳み込み積分により、その時間発展を追跡する。数MeVレンジにおけるURAによる加速は、ピッチ各を下げる方向に作用し、位相空間での速度分布関数はダンベル型、あるいはバタフライ型の形状となることが分かり、衛星観測とも良い一致を見た。一方、EMIC波による放射線帯の相対論的電子のピッチ角散乱過程について、新しい知見を得ることができた。ロスコーン付近の低ピッチ角の電子について、非線形トラッピングの条件を計算したところ、非線形トラッピングではなく、運動方程式におけるもう一つの非線形項によって有効なピッチ角散乱が起こってロスコーンに降下することが判明したさらに、EMIC波が発生している経度範囲を10度に限定して、その部分のピッチ角散乱によって放射線帯全体の電子分布がどのように変化するかを調べ、SLPAと合わせて学術誌に論文投稿を行った。コーラスと高エネルギー電子の相互作用の研究では、従来では外部磁場に平行に伝搬するモードのみを想定して行われてきたが、新たに斜め伝搬の相互作用について理論と数値モデルを作成して、これまで考えていなかった共鳴過程が有効に起こることを示した。この論文を学術誌に発表した。コーラスと高エネルギー電子の相互作用の研究では、従来では外部磁場に平行に伝搬するモードのみを想定して行われてきたが、新たに斜め伝搬の相互作用について理論と数値モデルを作成して、これまで考えていなかった共鳴過程が有効に起こることを示した。この論文を学術誌に発表した。
1: 当初の計画以上に進展している
順調に研究が進んだ上に、新たな物理過程に対する知見を得ることができた。国際共同研究も活発に行い、本研究に関する研究成果をまとめた主論文4編、および関連論文を4編発表することができたため、当初の計画以上の進展を見ることができたと自己評価する。
(1)斜め伝搬ホイッスラーモード波による加熱・ピッチ角散乱過程の解明:前年度の行った平行伝搬コーラスのモデルを拡張して、コーラス放射が赤道域から次第に外部磁場に対して斜め伝搬となるように波動のモデルを設定し、斜め伝搬によって起こるランダウ共鳴による粒子加速およびピッチ角散乱の素過程を解析し、加えて数値グリーン関数を計算することにより放射線帯の形成過程を定量的に追跡する。(2)EMICトリガード放射による相対論的電子のピッチ角散乱過程:電磁イオンサイクロトロン(EMIC)波のライジングトーン放射によって極めて効率的に相対論的電子のピッチ角散乱が起こることがこれまでの研究で分かっているが、放射線帯電子が極域大気に降下して、放射線帯電子フラックスが減少する過程を、EMIC波の経度分布を含めてテスト粒子シミュレーションにより再現する。(3)コーラスおよびEMIC波のサブパケットによる電子加熱効果の評価:コーラス放射およびEMIC波のライジングトーン放射がサブパケット構造を持っていることが分かってきた。サブパケット構造を持つ波動をモデルにして、コーラスによる線形成過程に加えてEMIC波のピッチ角散乱による放射線消失過程を含めて数値グリーン関数法を実行し、放射線帯の長時間変動のモデルを構築することを検討する。(4)準線形拡散モデルと数値グリーン関数法の比較:放射線帯変動のモデリングにおいて準線形拡散モデルが多く使われているが、本研究で開発する数値グリーン関数法によるモデリングと準線形拡散モデルを比較して、本研究の手法の方が観測結果をより正確に再現できることを示す。
研究が予想以上に進展し、多くの研究成果が得られつつある。次年度の国際学会に共同研究者および本研究課題に取り組んでいる学生を派遣して、成果発表を行い、論文発表をしてゆく必要がある。当初の計画以上の旅費と学会登録費が必要となってきたため、次年度に一部の予算を繰り越した。
2016年6月末に台湾で開催されるICPP 2016および12月にサンフランシスコで開催されるAGU Fall Meeting 2016に、大学院学生3名を派遣する予定である。
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (4件) 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 8件、 査読あり 8件、 謝辞記載あり 6件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 4件、 招待講演 5件)
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