研究課題/領域番号 |
26287122
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研究機関 | 独立行政法人宇宙航空研究開発機構 |
研究代表者 |
藤本 正樹 独立行政法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 教授 (30242811)
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研究分担者 |
笠原 慧 独立行政法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 助教 (00550500)
篠原 育 独立行政法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 准教授 (20301723)
齋藤 義文 独立行政法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 准教授 (30260011)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 木星磁気圏 / 衝撃波での粒子加速 / ガリレオ木星探査機 / カッシーニ土星探査機 / 検出器信号読み出し系 / ASIC / 小面積・深空乏層SSD / APD |
研究実績の概要 |
本研究の理論・データ解析テーマのうち、H26年度で予定していたものは、(1)太陽風と磁気圏の相互作用:(A)太陽風動圧の変化に対する木星磁気圏の応答の調査、(B)外惑星における磁気リコネクションの効果、(2)衝撃波の物理:(A)土星バウショックのサーヴェイ、(B)平行衝撃波でのイオン加速、というものである。(1A)木星磁気圏の磁気ディスク部分における太陽風動圧変化への応答性について、ガリレオデータの調査を完了した。(1B)外惑星では磁気リコネクション効果が制限されることを示唆する結果を、カッシーニのデータ解析から得た。(2A)土星バウショックに終える電子加速イヴェントを、カッシーニにデータから抽出した。(2B)イオン加速と磁場擾乱の共進化を既に見出しているが、それが相似的に進行するであろうことも見出した。 本研究の理論・データ解析テーマと並ぶ主要な目的は、「粒子加速」観点から絶好の環境といえる木星・土星磁気圏において、粒子加速の観測的理解をより充実させることである。このために、高エネルギー粒子観測器の心臓部たる小面積・深空乏層SSD、アバランシェフォトダイオード(APD)といった半導体検出器に関する技術基盤の上に、高性能ASIC (特定用途向け集積回路)を用いた小型軽量、省電力の高速信号読み出し系を組み合わす開発を行う。ASICの開発について、それに必要となるツールの準備も含めて、予想より長い時間を必要とすることが判明したため、当初計画を少し変更し、H26年度中に設計に必要な機材の調査から開発作業を開始した。ASIC設計用機材の選定、設計ツールとシミュレータを購入して、動作環境を整備した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の理論・データ解析テーマに関して、(1A)木星磁気圏の磁気ディスク部分は太陽風動圧が上昇すると活動領域が木星に近づくという結果は、H27年度以降に予定されていた計画へとつながる。(1B)外惑星では磁気リコネクション効果が弱まる可能性の発見は、H27の予定されていた研究を加速するものである。(2A)見いだされた電子加速イヴェントを物理的に解釈することを、H27に進めることは予定通りである。(2B)イオン加速と磁場擾乱の共進化に関する相似則の考察は、H27に実行すべき数値実験の方向性を確かなものとする。 本研究の主要な目的の一つである高性能ASICを用いた、小型軽量、省電力の高速信号読み出し系の開発について、当初の計画を変更してASIC開発を前倒しで開始し、 ASIC設計ツールとシミュレータの調達および、それらを購入して動作させるハードウェアの調達と動作試験までを完了した。その意味では、当初予定を上回るペースで、本研究は進行しており、予定以上の達成度が得られているといえる。その一方で、当初計画でH26年度に予定していた、検出器部分の設計・製作・試験については、H27年度に先送りしたため、遅れが発生している。しかしながら研究計画全体として考えた時、より時間のかかるASIC開発を前倒しとすることで、研究計画後半での時間切れを防ぐことが可能となり、また、検出器部分については既に目的達成の大方の目処は立っているため、研究計画全体としては、ほぼ予定通りの達成度が得られていると判定することができる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の理論・データ解析テーマに関しては、当初の予定通りに進行している。 本研究の主要な目的の一つである高性能ASICを用いた、小型軽量、省電力の高速信号読み出し系の開発については、H26年度にASICの開発準備を前倒しで実施したことから、H27年度は申請当初の年次予定通りASICの設計をすみやかに開始することができる。具体的には、既に衛星搭載用観測装置電子回路部分のASIC化の経験を持つ研究グループの支援を受け、信号検出に必要となる入力アンプなどの必要となるコンポーネントの設計を開始する。一方、検出器部分についてはH26年度からH27年度に先送りした、検出器の購入、性能確認などを実施する。具体的には、入手した検出器を基板/フレームにマウントした上で高圧を印加し、荷電粒子やX線源等による信号検出の試験を行う。このように、研究計画全体を見渡した上で、臨機応変に必要となる作業を前倒しで実施することで、研究計画全体の目標達成を目指す。 H28年度には、H27年度に開始したASICの設計を進めて、検出器からの信号の波高を検出するためのAD変換器部分の設計に着手、H28年度中のAD変換器部分のASICへの組み込みを目指す。H29年度には、H28年度までに設計の終了した信号読出し系ASICの試作を行い、試作品の電気的な性能確認試験の実施と、将来のより高性能のASICの設計・開発に向けてのデータ取得を行う。以上のような、ベースラインとなる計画を随時見直しつつ遂行することで、研究計画全体の目標達成を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
H26年度に予定していた、検出器部分の設計・製作・試験をH27年度に先送りし、 H26年度にASICの開発準備を前倒しで実施したことから、経費としては次年度使用額が 発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
H26年度からH27年度に先送りした、検出器の購入に使用する。
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