研究課題/領域番号 |
26287123
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
武藤 潤 東北大学, 高度教養教育・学生支援機構, 助教 (40545787)
|
研究分担者 |
飯沼 卓史 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地震津波海域観測研究開発センター, 研究員 (10436074)
平賀 岳彦 東京大学, 地震研究所, 准教授 (10444077)
大園 真子 山形大学, 理学部, 講師 (10623837)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 東北沖地震 / 余効変動 / 遷移挙動 / レオロジー / 地殻変動 |
研究実績の概要 |
本研究は、東北大学既設のガス圧試験機ヒーターを改良し、国内最高温度である1000度を超える温度でクリープ試験を行い、東北沖地震後の余効変動を予測する岩石の遷移流動挙動を明らかにすることを目的としている。そのために、平成27年度は、下記を行った。1)高温出力可能なモリブデン線をヒーター線として採用した。これまでのカンタル線に比べて、より高温下での使用が可能なモリブデン線ワイヤーによるヒータを検討した。2)3ゾーンのヒータ-構造と温度コントローラを作成した。これにより大型化した圧力容器内を効率的に過熱する事のできる3ゾーンヒーターとモリブデン線のヒーター制御に対応した温度調整機を作成した。特に、圧力容器の大型化により、容器内部の熱対流が激しくなることが想定されるが、3ゾーン制御により、試料周辺部のみ過熱することが容易になる。3)圧力容器を持ち上げ、フィードスルーや信号線などが多く存在する下部のスペース拡大による試料アセンブリの平易化。圧力容器を持ち上げ、フレームと一体化させることで、その下部に試料アセンブリの際に用いることのできるスペースを確保した。これにより、圧力容器下部にある内部荷重計・微小変位計・ヒーター線などの結線やアクチュエータとの結合が容易かつ安全に行うことが可能になった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成27年度は、改良した圧力容器・ヒーターに適合したヒーター線の選定とヒーター制御温度調整機を作成した。また大型化した試験機で、各種信号線などを断線する事なく、安全かつ簡便に取り扱うため、圧力容器下のスペース拡大を行った。これにより、大型化した高圧部品の安全かつ容易なアセンブリ化が可能になり、圧力容器内部に、大量の断熱材を容易に配置することも可能になった。以上の改良により、高温化での実験は容易になることが想定される。しかし、上記の改良や出発試料の選定(カンラン石多結晶体)に時間を取られ、高温下での変形実験はまだ行っていない。今後は早急に実験を行い、試験機の剛性評価と高温実験を行う。
|
今後の研究の推進方策 |
オリビンの塑性流動を可能にする試料加熱システムのテストを行い、試験機の力学特性の測定及びカンラン石多結晶体の変形実験を行う。上部マントルの温度条件下で地震直後の粘弾性緩和挙動を明らかにするために、クリープ試験および応力ステップ実験などの変形実験を行う。クリープ試験では、試料に一定差応力を負荷し、試料の変形 量(歪)を測定する。応力ステップ実験は、一定応力下で定常流動している状態から、ステップ状に次の高応力レベルへと増加させたときの遷移過程を測定する。また定常状態に達した後の徐荷曲線から、遷移過程の弾性係数を求める。超硬やアルミナ等の硬い材料を用いて、クリープ・応力緩和試験などを行い、広範な温度・圧力条件下 で試料の剛性を調べる。また、余効変動解析に重要である試料にはアセノスフェアを構成する人工カンラン岩多結晶体(特に微細組織などをコントロールした多結晶体)を用いる。これらの実験から、遷移過程の粘性率と弾性係数が、定常状態とどの程度異なるのかを調べる。特に、実験条件(載荷応力レべル、実験温度、粒径など)を大きく変化させることで、遷移挙動の力学特性を定常状態との比較で調べる。また載荷応力レベル、微細組織、試料中の含水量などを変化させることで、カンラン岩多結晶体の流動変形 機構を変化させ、変形機構の変化による遷移挙動の変化や定常状態に至るまでの時間(もしくは遷移挙動における歪量)を測定する。これらをまとめ、遷移挙動のパラメータ化を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
今年度、博士研究員もしくは実験補助を雇用する計画であったが、試験機の高温化に関する改良に想定より時間がかかったため、雇用を見送った。
|
次年度使用額の使用計画 |
今年度は、実験補助もしくは実験支援を雇用し研究を進めていく。
|