研究課題
四万十付加体中に発達するシュードタキライト及び高速摩擦実験で形成されたシュードタキライトを用いて炭質物ラマンスペクトルを測定した。その結果、どちらも母岩に比べラマンバンドの強度比が明瞭に増加し、炭質物の熟成度が増加することを明らかにした。また、この炭質物の熟成度増加は、4-16秒と極めて短時間のうちに起こり、シュードタキライトマトリックスが脱ガラス化・粘土化した後も維持されることが分かった。これらのことに加え、母岩におけるラマンバンドの強度比及び粘土鉱物(イライト)の熱分解の証拠から、炭質物のラマンスペクトルは摩擦発熱のような短時間急速加熱の検出に有効で、周囲の温度が280℃以下で、断層におけるすべりが850℃以上に達した際に、摩擦発熱の指標になり得ることを明らかにした。更に、高速摩擦実験データとラマンデータの比較を行い、ラマンバンドの強度比の標準偏差と平均剪断応力の間に負の非常に良い相関(相関係数1.0)があることを見出した。これは、平均剪断応力の増加に伴って温度上昇量が増加すると、断層における炭質物の熟成度がより均質になることを反映しているのかもしれない。この相関関係を用いて、四万十付加体中に発達するシュードタキライトのラマンバンドデータから地震時の平均剪断応力を見積もったところ、1.8 MPaという値が得られた。このシュードタキライトは深度4-6 kmで形成されたことが分かっているので、静水圧条件を仮定すると地震時の摩擦係数は0.03-0.05となる。このことは地震時に断層で熔融潤滑(melt lubrication)が起こったことを表しており、別の手法により見出された先行研究結果とも調和的である。このことから、炭質物ラマンスペクトルは地震時の剪断強度見積もりにも有効であることが示された。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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Geophysical Research Letters
巻: 44 ページ: 1749-1757
10.1002/ 2016GL072457
Geological Society, London
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http://www.geol.tsukuba.ac.jp/~kohtaro/Kohtaro_Ujiie/Home.html