研究課題/領域番号 |
26287126
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
北村 晃寿 静岡大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (20260581)
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研究分担者 |
横山 祐典 東京大学, 大気海洋研究所, 教授 (10359648)
宮入 陽介 東京大学, 大気海洋研究所, 研究員 (30451800)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 津波堆積物 / 隆起貝層 / 古地震 / 活断層 / 南海トラフ / 完新統 / 放射性炭素年代 |
研究実績の概要 |
本研究では,静岡平野・清水平野・焼津平野における津波堆積物の調査,伊豆半島南部と式根島における隆起貝層と完新統の調査を行い,南海トラフ東端における過去数千年間の津波と地震の履歴を明らかにする.2014年度は以下のことが明らかとなった. 1.焼津平野の9地点(標高1.8-4.6 m)で掘削したボーリングコアを解析した(北村ほか, 印刷中).2地点で,カワゴ平火山の噴出物(1,210-1,187 BC (2σ))を検出した.一方,津波堆積物は検出されなかった. 2.伊豆半島南端の海岸線を綿密に調査し,既報の4地点(Kitamura et al. in press)よりも東の九十浜と,既報の4地点よりも西の盥(たらい)岬で,新たに隆起貝層を発見し,それらの構成種の記載と14C年代測定を行った.その結果と先行研究のデータから地震性隆起量の平均値を求め,断層モデルを用いて,地震性隆起を起こした海底逆断層を推定した.その結果,断層は下田市の沖合い約5 kmに位置し,長さ 10.7 km,幅 15 km,走向70°,傾斜 16°N,すべり量6.0 m,Mw=6.9と推定される. 3.式根島では,既報の隆起貝層に加えて,4地点で離水生物遺骸を発見した.それらの年代ー高度分布は,過去1000年間に3回の突発的隆起事件が起きた可能性を示唆し,隆起事件の年代と最大隆起量は,西暦1120-1400年で0.4 m,1530-1890年で1.8 m,1860-1950年で1.0 m,と見積もられる.そして,西暦1120-1400年と1530-1890年の隆起量は,1498年明応地震の津波および1605年の慶長地震の津波の波源域としての式根島南方の銭洲海嶺南縁の可能性を支持しない.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究期間に実施する項目は下記の6つで,2014年度には(3),(4),(6)が終了したので,おおむね順調に進展している.(1)静岡・清水平野で津波堆積物の分布を解明し,古津波の規模を特定する,(2)清水平野の完新統に関しては,堆積相・珪藻群集解析から明応地震と宝永地震の地殻変動の有無を明らかにする,(3)焼津平野において津波堆積物の有無を明らかにする,(4)伊豆半島南端の海岸で隆起貝層と津波石の発見を目指し,発見されたならば年代測定を行い,地殻変動・古津波の情報を得る,(5)伊豆半島南端の沿岸低地でボーリング掘削を行い,完新統の堆積相・珪藻群集解析から地殻変動に関する情報を得る,(6)式根島では,既報の隆起貝層の調査並びに新たな隆起貝層の発見を目指す.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策は以下の通りである.(1)静岡平野東南部の大谷低地と清水平野で見つかった約3565-3486 cal BPの津波堆積物(六間川―大谷津波)の分布を明らかにするための調査を行う.(2)焼津平野においては焼津市と共同で瀬戸川以北の海岸低地で津波堆積物の調査を行う.(3)伊豆半島南部の隆起貝層の分布と年代および断層モデルから下田市の沖合い約5 kmに逆断層を設定したが,その位置の妥当性を検討するために,下田沖10kmに位置する神子元島で隆起貝層や海岸地形の調査を行う.隆起貝層や離水地形はないはずである.(4)式根島の南方10kmには神津島があり,GPSデータ解析によって,両島の間に伊豆マイクロプレートの東側境界が設定され,この境界は左横ずれ運動をしていて,一部を除いてほぼ完全に固着しており,M 7程度の地震の震源断層となる可能性がある.そこで,神津島でも隆起貝層の調査を行い,過去数千年間の地殻変動を調べる.
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次年度使用額が生じた理由 |
ボーリング掘削の際には,地権者の同意を得る必要がある.今年度は,焼津平野において地権者の同意を得れた地点が9地点に留まったため,ボーリングコアの掘削費用が当初予定よりも小額となった.
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次年度使用額の使用計画 |
今年度の調査実績によって,焼津市から津波堆積物調査の協力も得れたので,地権者の同意を得て,ボーリングコアの掘削を実施する予定である.
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