研究課題
本年度は,津波起源混濁流の挙動を定量的に予測するため,水槽実験ならびに数値モデルの開発を中心に研究を行った.その結果,混濁流の数値モデルを構築するうえでは,(A)混合粒径の堆積物の取り扱いをどのようにするか,(B)浮流砂密度成層による乱流抑制効果をどのようにとりこむか,という2点が大きな課題であることが明らかになった.これまで,混合粒径の混濁流堆積物の堆積プロセスをモデル計算で取り扱う際に,既存研究は均一粒径を用いてえられた経験的堆積物連行関数をそのまま拡張して用いることが普通であった.しかしながら,混合粒径を用いた混濁流水槽実験の結果からは,そのような単純なやり方では現象を十分に表現できないことが明らかになった.したがって,本研究の課題を遂行するためには,混合粒径を当初から考慮した新しい堆積物連行関数を実験結果に基づいて構築することが急務である.また,混濁流による浮流砂の輸送プロセスを考慮するうえでは,浮流砂密度成層による乱流抑制効果をモデルに取り込むことが欠かせないことが前年からの研究で明らかになっている.今年度は乱流運動エネルギー保存則と干渉沈降を同時に取り込んだモデルを利用して,混濁流や津波の観測結果によく適合する計算結果を得ることに成功した.さらに,今年度は上記の成果を拡張し,混濁流のつくる地形の理論形状を解明した.これに加えて,混合粒径の津波堆積物の逆解析モデルの開発にも成功している.これらの成果は津波起源混濁流堆積物を地層中で認定し,そこから古水理条件を復元するための基礎となるものである.
2: おおむね順調に進展している
現状で,当初の目標となっていた数値モデル開発と水槽実験はおおむね進行している.研究を遂行する過程でいくつかの困難が発見されたものの,それらの解決方法についてはほぼ目途が立っている状態である.
今後は,モデル開発を完成させ,水槽実験による検証を十分に行う予定である.さらに,タービダイトのフィールドワークに基づく調査を進め,実際の地層から津波起源混濁流の堆積物を認定することを目指す.
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)
地学雑誌
巻: 125 ページ: 163-170
10.5026/jgeography.125.7
石油技術協会誌
巻: 81 ページ: 22-32
Quaternary International
巻: 397 ページ: 208-222
10.1016/j.quaint.2015.08.032
堆積学研究
巻: 74 ページ: 45-53