研究課題/領域番号 |
26287132
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
岡本 敦 東北大学, 環境科学研究科, 准教授 (40422092)
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研究分担者 |
渡邉 則昭 東北大学, 環境科学研究科, 准教授 (60466539)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 水熱実験 / シリカ / 溶解・析出 / 透水率 / X線CT / ガウジ / 流体圧振動 / 核形成 |
研究実績の概要 |
本年度は、超臨界亜臨界条件・封圧下における花崗岩亀裂の溶解実験と、多孔質体におけるシリカ析出実験とそのモデル化、さらに減圧実験におけるシリカ析出実験を進めた。 <花崗岩亀裂の溶解実験>新しい水熱実験装置を用いて、花崗岩亀裂の溶解実験を行い、亀裂間隙構造と透水率の変化を検討した。特に、封圧20MPaにおいて、1.常温・流通、2. 高温・非流動、3. 高温・流通という3段階の連続的な実験を行うと、ステージ1と2では全体的な間隙減少、ステージ3では溶解による急激な透水率上昇が観測された。鉱物分布との比較と流動シミュレーションによって検討すると、石英粒子はよく溶けるが、それとは無関係に大きな間隙が形成され、卓越流路が形成されたことが明らかになった。この間隙部分を検討した結果、亀裂形成時に発生した岩石の粉末(ガウジ)が選択的に溶解したことがわかった。このようなガウジの溶解の効果は、実際の亀裂では非常に重要になると予想され、学会で報告するとともに、また、国際誌に投稿準備中である。 <シリカ析出による多孔質体の間隙閉塞>昨年に引き続き、多孔質体のシリカ析出実験を行い、そのモデル化を進めた。特に、超臨界でのシリカを析出において、アモルファスが析出し、より安定な石英へと変化する現象については、ミクロな統計物理的モデルを構築し、Physical Revie E に掲載された。また、この閉塞が起こると、シリカが運搬、付着することによって特徴的な流体圧の振動を引き起こすことを見出し、ポアスロートが閉塞、破壊を繰り返すモデルで表現できることを示した。 <減圧によるシリカ析出実験>地震では減圧によってシリカが析出すると考えられるが、検証されていない。予察的な実験により、フラッシングによってアモルファスシリカの微粒子が形成され、間隙を埋めることを確認した。今後、系統的な実験を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
<実験装置の開発>開発した新しい実験装置を当初の予定通り、初年度に開発し、本年度、亜臨界・超臨界条件で化学反応を起こしながら透水率の変化を測定すること、また、実験中にコア試料を取り外し、繰り返し間隙構造の変化を読み取ることなどの基本的な実験手順を試行錯誤の上に確立することに成功した。 <溶解による透水率変化>現時点では、上記の装置を使っての実験は、花崗岩亀裂の溶解実験であるが、その溶解による流路形成と透水率変化には、実は基盤鉱物の分布(石英の選択的溶解など)よりもガウジが重要であるという今まで見過ごされている現象を発見した。この現象については、学会で報告し、国際誌で投稿準備中である。上記装置でのシリカ析出実験は、次年度の課題である。 <シリカ析出による閉塞と流体圧振動>シリカの析出による閉塞実験は、より簡易的な封圧をかけない装置で行っているが、非常に過飽和な条件でシリカを析出させると流がされ付着し、間隙を閉塞させること、また、その際に特徴的な流体圧振動が発生することを明らかにした。これは、本課題の1つのターゲットであった、地震サイクルと流体圧変化にもつながる重要な知見であり、学会で報告し、また投稿準備中である。シリカの析出様式に関するモデルについては、本年度、Physical Review Eに掲載されている。 <天然の鉱物脈の解析と比較>三波川変成帯の鉱物脈の調査と組織の解析を進めており、人工的な鉱物脈との比較を行う予定である。 以上、予想より進んでいる部分と発見があり、一方で封圧下の亀裂での析出実験が少し遅れているが、全体としては概ね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の予定は以下の通りである。 <封圧下の花崗岩亀裂の溶解実験の解析>主な実験は、本年度にすでに行っているが、その詳細な解析を行うことにより、通常の間隙によって、各鉱物がどのくらいの速さで溶解するのか、また、ガウジ部分の溶解速度はどのくらい違うのかという速度論的な考察と、流体流動を組み合わせて、モデルを構築する。封圧と温度を変えた実験を追加する。まとめた内容については、国際誌に投稿する。 <封圧下の花崗岩亀裂のシリカ析出実験>今後の研究の中心はこの実験である。溶液があまりにシリカに高過飽和であるとアモルファスが析出して、亀裂の入り口や、亀裂でない流路に析出してしまう可能性があるので、まずは、過飽和度が1.5程度の比較的低濃度での実験を行い、花崗岩の基盤石英の成長とそれが間隙閉塞に与える影響を評価する。特に、特徴的な流路を形成したり、石英の成長によってジャッキアップが起こったりするかを評価する。その上で、徐々に過飽和度を上げていくことにより、流路形成や党する位rつ変化にシリカの析出がどのような影響を与えるかの系統性を明らかにして、モデル化する。 <人工石英脈と天然の鉱物脈との比較>作成した人工鉱物脈と天然の鉱物脈(三波川帯、葛根田地熱地帯)との比較を行い、鉱物脈形成が地殻の透水率に与える影響を評価する。 <シリカによる亀裂閉塞と地震サイクルとの関係性>本年度の研究で見出したシリカ析出による流体圧振動についての考察を深め、また追加実験などを行うとともに、天然の地震に伴う流体圧変化について文献調査し、その関連性を明らかにしながら、結果をまとめて、国際誌で公表する予定である。また、地震が起こると急激な減圧が起こり、シリカの析出が起こると考えられている。これについての、本年度、予察的な実験を行っているが、系統的な実験を行いフラッシングによるシリカの析出様式の変化を明らかにする。
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