研究課題
本年度は主に超臨界条件における析出実験を行った。高過飽和なSi溶液を流した場合、10時間程度の短期間に亀裂が閉塞し、浸透率が1桁ほど減少した。X線CTや薄片によって間隙を観察すると、析出は亀裂の内部で均質に起こるわけではなく、4cmのコアに対して入口のたかだか2mm程度のところにアモルファスとして析出し、その一部は石英に変化していることが明らかになった。一方で、基盤石英の成長によるシリカの析出は非常に遅い。実験条件は、地殻の透水-不透水境界近傍における対応しており、シリカ析出は基盤の鉱物分布によらず効果的に間隙を閉塞させること、またシリカ不透水層は比較的薄い可能性を示唆している。さらに、限定的なシリカ析出は、さらなる深部の超臨界地熱貯留層には間隙が維持されうる可能性を示している。一方、実験においてシリカ析出で亀裂が閉塞する際には、全体としては、浸透率が低下しつつも複数回の上昇が観察された。これは、シリカ析出物の破壊による流体圧の減少であり、地殻内部においては、シリカの析出―流体圧上昇-地震(破壊)のサイクルがおこなりながら、強度回復する様子を超臨界の亀裂条件下で再現できたと言える。また、沈み込み帯におけるシリカの析出と地震サイクルの関係を明らかにするために、新しい石英脈形成モデルを作成した。このモデルは、移流によって周囲から流体が流入して内部で析出するというモデルであり、亀裂の内部と母岩の流体圧の変化を与えると、シーリングの時間が自動的に決定できる。このモデルを用いて、四万十帯に存在する延岡断層(過去の付加帯分岐断層)周辺の石英脈のシーリングの時間スケールが典型的なもので30年程度、全体としては300年程度で起こったことを明らかにした。この時間スケールは、南海トラフ地震の再来周期とよく一致し、シリカの析出による流体圧上昇が重要な役割を持っていることを示唆する。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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