研究課題
地球深部マントルの条件で安定な高密度含水鉱物の性質は、近年の鉱物学分野で注目されている研究対象の一つである。含水鉱物の性質は、それらの結晶構造中の水素の配置と化学結合状態に影響される。そこで我々は、高強度パルス中性子を利用した含水鉱物中の水素の配置・占有率の解析を行った。特に、高い空間分解能を持つ飛行時間ラウエ回折法による単結晶構造解析の手段を、マントル深部鉱物に対して応用することが、鉱物の性質に対する水素の影響の理解のためには重要であった。我々は前年度までに、サイズと均質性を兼ね備えた高密度含水鉱物の単結晶を超高圧力下において合成する手法を完成させた(Okuchi et al. Am. Mineral. 2015)。この手法によって理想的な含水ワズレアイトと含水リングウッダイトの単結晶を合成した上で、米国オークリッジ国立研究所のパルス中性子施設SNSの単結回折計・TOPAZにて測定を実施して、最小d値が0.30オングストロームに達する非常に高い空間分解能の回折強度データを得た。今年度はそれらの解析を行い、含水ワズレアイトの結晶構造の論文を国際誌に発表した(Purevjav et al. 2016)。さらに上記結晶合成法を応用した関連研究の成果も、国際誌および国内誌に複数の論文として発表した。加えて国際学会および国内学会における多数の研究発表も実施した。このように研究に大きな進展があり、本課題の当初の目標が前倒しで達成された。そこで研究計画を再構築し、高空間分解能の結晶構造解析法の導入が必要とされる関連研究をもあわせて発展させるために、最終年度前年度の応募を行った。その結果、2017年度から4年間の期間で基盤研究(A)が採択され、同時に本研究課題は前倒しで終了した。今後は成果を新課題に引き継ぐことで、さらなる研究の発展を目指してゆきたい。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (5件) 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 5件、 査読あり 7件、 謝辞記載あり 6件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 4件、 招待講演 1件)
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