研究課題
本研究は、地球の内核物質であるε鉄の粘性率や粒成長速度といったレオロジー的性質を明らかにし、内核のダイナミクスに制約を与えることを目的としている。そこで、今年度は主要に粒成長について研究を行った。ε鉄は高圧下のみで安定である相であり、その熱活性化過程を理解するためには、少なくとも1000 K以上の高温が必要となる。そこで、川井型高圧装置に焼結ダイヤモンドアンビルを組み込み、放射光施設において、高温高圧その場X線回折実験を行い、粒成長の様子を観察した。実験の圧力は約55 GPa、温度は1200~1500 Kの範囲である。粒成長はX線による回折点数の変化により観察を行った。これは、回折点数は、光学系が同一条件の場合に、回折体積内に存在する粒子数に比例するという関係を利用するものである。実験において、高温では粒子数の減少が顕著にみられ、低温ではその減少がゆっくり起きていることが観察された。即ち、粒成長の温度依存性を観察することに成功した。一方、内核の粘性率を推定するために、ε鉄の元素拡散を調べる実験を行った。拡散種に同位体に富んだ鉄を用いて、通常の同位体鉄と高圧高温下で反応させ、その拡散距離から、拡散係数を調べる手法である。実験は、岡山大学地球物質科学研究センター設置の6軸型川井型マルチアンビル装置で行った。また、試料の分析には、北海道大学理学部設置の二次イオン質量分析計を用いた。分析結果は、約60 GPa、1300Kでは、鉄の自己拡散係数は約10-18 m2/sとなることを示している。
2: おおむね順調に進展している
予定していた純鉄での粒成長実験に関してはデータはそろいつつある。今後は解析を行いまとめていく。また、拡散実験に関しても広い温度圧力領域をカバーするには至っていないが、データが出始めてきている。従って、「おおむね順調に進展している」と判断した。
均質に軽元素を鉄中にドープすることが今後のキーポイントとなると思われる。現在、企業の方と打ち合わせをしており、少なくとも数種類の軽元素については明るい展望をもっており、これらの軽元素ドープ試料から実験を遂行していく。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 8件) 学会発表 (2件)
Earth Planets Space
巻: 66 ページ: 2
10.1186/1880-5981-66-2
Phys. Chem. Minerals
巻: 41 ページ: 555-567
10.1007/s00269-014-0669-x
Am. Mineral.
巻: 99 ページ: 1788-1798
10.2138/am.2014.4736
Earth Planet. Sci. Lett.
巻: 403 ページ: 352-357
10.1016/j.epsl.2014.07.017
高圧力の科学と技術
巻: 24 ページ: 126-135
http://dx.doi.org/10.4131/jshpreview.24.126
巻: 405 ページ: 98-109
10.1016/j.epsl.2014.08.018
Inorg. Chem.
巻: 53 ページ: 11732-11739
10.1021/ic501958y
J. Geophys. Res.
巻: 119 ページ: 7598-7606
10.1002/2014JB011141