研究課題/領域番号 |
26287139
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
角野 浩史 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (90332593)
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研究分担者 |
水上 知行 金沢大学, 自然システム学系, 助教 (80396811)
WALLIS R・Simon 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (30263065)
石丸 聡子 熊本大学, 先端科学研究部, 助教 (60464046)
鍵 裕之 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (70233666)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ハロゲン / 希ガス / 水 / 沈み込み / マントル / スラブ流体 / 質量分析 / 中性子照射 |
研究実績の概要 |
シベリア産キンバーライトに含まれるマントル捕獲岩の希ガス・ハロゲン分析を行い、高い塩素濃度と、エクロジャイトと似たハロゲン組成を持つことを明らかにした。また南米・パタゴニア地域のマントル捕獲岩の希ガス同位体比を分析し、大気起源希ガスと核反応起源成分に富むネオンを見出した。これらの結果は、プレートの沈み込みの影響が現在及んでいない大陸下マントルにも、かつて沈み込んだハロゲンや希ガスの影響が遺されていることを示している。またマントルへの水の運び手として重要視される、海水により変質した海洋地殻を分析した。その結果、海洋地殻は変質により主に塩素のみが富むようなハロゲン組成の変化をしており、また同時に加わった海水起源希ガスは、その沈み込みがマントルの組成に十分影響しうる量であることが分かった。 分担者のウォリスと水上は、四国・三波川変成帯の西五良津岩体中の斜方輝石に、プレート沈み込みの開始期と成熟期それぞれにおいてマントルウェッジの前弧域に供給された水の痕跡を見出した。また石丸は、フィリピン・イラヤ火山のかんらん岩捕獲岩中の水に富む流体包有物について、塩濃度は試料によらずほぼ均質で、流体がかんらん石を置換する斜方輝石の形成に関与したことを示した。これらの試料はスラブからマントルウェッジに供給された水の特徴をよく保存していることから、今後の希ガス・ハロゲン分析によって、マントルに沈み込む水の起源と量に関する情報を与えると期待される。 また鍵は、ブラジル・Sao Luiz地域に産するダイヤモンドを様々な分光法で調べ、内包される鉱物の包有物が下部マントル-マントル遷移層―上部マントルへと至る間に相転移してきた履歴が残っていることを示した。これはこのダイヤモンドが下部マントルから上昇してきた証拠であり、この試料から、下部マントルにおける希ガスとハロゲンの組成を明らかにできる可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
希ガス・ハロゲン分析の対象とする、マントル起源物質の岩石学・鉱物学的研究は分担者らにより順調に進展しているが、本年度中に稼働予定とされていたため利用を想定していた国内の研究用原子炉が、新規制基準への適合審査が長引き稼働しなかったために、国外の原子炉を利用することとなった。そのため翌年度に繰り越して研究を継続したが、照射できた試料の数量が制限されたことから、限られた成果しか得られなかった。
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今後の研究の推進方策 |
上にも述べたとおり、ハロゲン分析に必須である中性子照射を行うための原子炉(日本原子力研究機構JMTR材料試験炉および京都大学原子炉実験所KUR研究炉)の再稼働は、既に各機関から原子力規制庁に申請され審議が継続しているが、その見通しは依然として不透明である。そのため、海外の原子炉と分析用設備の利用も検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
ハロゲン分析に必須の中性子照射を行うために当初利用を計画していた国内の研究用原子炉の年度内の稼働の目処が立たず、照射のための消耗品費や原子炉への往復旅費の支出がなく、予定していたハロゲン分析も実施できなかったため
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次年度使用額の使用計画 |
海外の原子炉の利用を検討するにあたり、試料を原子炉内に導入するための試料カプセルを新規に製作する費用として用いるほか、その窓口となる東北大学附属金属材料研究所量子エネルギー材料科学国際研究センターへの旅費に充てる。また照射後試料のハロゲン分析にかかる消耗品に用いる。
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