研究実績の概要 |
星間空間における分子進化を理解する上で,星間空間中に最も比率の多い元素である水素(プロトン)を含む化学反応は主要な役割を果たすと考えられる。本研究ではこのような化学反応過程の定性的かつ定量的な分析を行うために,極紫外および中赤外域のフェムト秒レーザーパルスを利用した先進的分光計測システムの構築を目的としている。本手法を水素を含む中性分子および分子イオンの光誘起化学反応に適用することで,星間分子の反応機構を反応ダイナミクスの観点から考察し,星間分子の存在形態や生成・消滅過程を反応素過程のレベルで理解することを目指す。
超高速分光計測システムの計測精度の向上を図るため,超短パルス光源の改良を行った。特に,中赤外域の超短パルスに生成に必要となる1300 nmの超短レーザーパルスの品質改善に取り組み,出力および時間幅などの最適化を行った。さらに,この長波長レーザー(20 uJ, 70 fs)を分光光源として評価するため,ヨウ化メチルの光誘起反応過程に応用したところ,ヨウ化メチルの1価および2価イオン状態からメチルラジカルイオンが生成する解離機構についての詳細を明らかにすることができた。 一方,本研究で開発を行った極紫外領域の単一次数高調波パルス(80 nm)は超短パルス光源として,例えばヨウ素分子の振動波束や窒素分子のリュードベリ電子波束などの超高速ダイナミクスを実時間で追跡できることが明らかとなり,その成果をStructural Dynamics誌に発表した。
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