研究課題/領域番号 |
26287141
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
中野 祐司 独立行政法人理化学研究所, 東原子分子物理研究室, 研究員 (20586036)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 合流ビーム / イオン蓄積リング / 星間分子 |
研究実績の概要 |
当初計画通り,研究初年度である平成26年度は,イオン・中性合流ビーム実験のための装置開発に専念した.具体的には,主に中性ビーム(負イオン源+半導体レーザー)開発と,イオン蓄積リングRICEにおける分子イオン蓄積テストを行った. 中性ビーム開発においては,負イオン源セットアップをリング入射に向けて再構成し,イオン蓄積リングに入射するためのビームラインを建設した.また,レーザー光による負イオンビームの中性化効率を従来から2桁向上するために,新たな光学シミュレーションを行い,カスタム設計の大強度半導体レーザー(波長808nm)を導入した.中性化用の真空チャンバーも新規に製作し,組み上げが進行中である.以上の装置開発及びアップグレードは高強度・高品質の中性ビームを生成し,分子イオンビームと衝突実験を行うために鍵となる技術であり,本研究目的達成のために不可欠な要素である. 同時に,冷却分子イオンビーム生成のためのイオン蓄積リングRICEの試運転を開始した.ビーム輸送行列,及び有限要素法を用いたビーム軌道シミュレーションを行うとともに,リング内の電極パラメータ調整と,入射ビームの最適化を行い,極低温下(5K)において,15 keVのNe+イオンビームを入射し,30分以上もの間蓄積することに成功した.極低温リングにおけるイオン蓄積の成功は日本で初,世界で2番目となる快挙である.本研究で冷却分子イオン・中性原子の衝突を行うためにも極低温リングの稼働は必須条件であり,年度内に開発フェーズを完了できたことにより当初計画通りに研究を推進することが可能となった.次年度の実験で利用予定の炭化水素系イオンについても,イオンビーム生成テスト及びビーム電流の測定がおおむね完了した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
負イオンビームアップグレードに関しては,真空チャンバ及びレーザー光学系の組み上げがやや計画より遅れている.一方で,イオン蓄積リングRICEにおけるイオン蓄積テストに関しては,電極デザインや使用するイオン種等の軽微な計画変更はあったものの,ほぼ全て予定通りに完了した.さらに次年度に予定していた炭化水素系イオンビームを用いたテスト等も完了している.以上を総合的に鑑みて,おおむね順調に進展していると評価する.
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今後の研究の推進方策 |
当初計画通り,中性ビームをイオン蓄積リングRICEへ入射し,星間分子進化を研究対象としたイオン・中性の衝突反応を観測する.年度前半は負イオンビームの中性化セクションの完成を最優先として開発を継続しつつ,イオン蓄積リングにおいて,種々の星間分子イオンの蓄積テストを行う.年度内には当初予定していたC+H3+,あるいはC+CH3+等の合流実験を実施し,衝突速度に依存した反応断面積を得るとともに,これをMaxwell-Boltzmann分布へと畳み込むことで温度に依存した反応速度係数を実験的に決定する. また,より中性化効率を向上するために光増幅キャビティを製作し,年度内にインストールすることを目標に開発を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
負イオンビーム中性化用の真空チャンバー及び光学系の組み上げがやや遅れたため,これにともなって消耗品(主として締結部品等)の購入予算15万円程度を次年度に見送った.
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次年度使用額の使用計画 |
次年度早々に真空チャンバーの組み上げを行うため,締結部品や架台固定に伴う消耗品の購入を行う予定である.
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