平成28年度は,理化学研究所の極低温静電型イオン蓄積リングRIKEN Cryogenic Electrostatic ring (RICE)を用いて,蓄積された分子イオンビームと中性原子ビームの合流実験のセットアップに取り組んだ。 蓄積リング内の残留気体(主に水素分子)は,イオンビームの蓄積寿命を制限するだけでなく,合流ビーム実験においてバックグラウンド信号の元となるため,その密度を定量的に評価することは本研究において重要なポイントである。エネルギー15 keVのNe+ビームを用いて得られたビーム減衰曲線をモデル関数に当てはめることで,残留気体との衝突による寿命をおよそ780秒と見積もった。これより得られた残留気体密度は1立方センチメートルあたり数万個程度であり,室温においておよそ1×10-10 Paの圧力に相当する。 また,中性原子ビームに関して,電子脱離用の大強度レーザーの試験用ハッチを設置し,大強度での発振試験,収束光学系の最適化を行った。光学追跡ソフトZEMAXによるシミュレーションをもとに,数パターンの光学系を設計して,ビームの収束サイズをビームプロファイラにて確認した。レーザーアレイの反りや,光学部品の温度上昇などに対策を講じ,中性ビームをRICEに入射するための準備がほぼ整った
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