研究課題
隕石とその構成鉱物には太陽系の起源や現在に至るまでの進化の過程と年代についての情報が鉱物組織、鉱物の割合、構成元素の同位体組成比や希土類元素をはじめとする微量元素分布の形で記録されており、その当時の形成過程・時間経過を知る上で非常に重要な役目を果たす。地球上の鉱物と同様に隕石中の鉱物にもまた色々なスケールで種々の元素、あるいは同位体組成比の不均質性が観察され、鉱物生成後の熱的影響により元々の分布から変化したものであり、固体中の元素の拡散現象に大きく支配される。従って、鉱物中での元素の拡散速度から天然の鉱物中に見られる元素・同位体組成比の不均質分布から鉱物の熱史を定量的に解析する事ができる。このためケイ酸塩鉱物中の元素の拡散係数を求めるために多くの実験的研究がなされている。しかしデータの蓄積は未だに十分でなく、また研究者ごとに拡散係数の値がオーダーを超えて異なる事があるなど、鉱物の熱史や放射性核種を用いた太陽系年代学の定量的議論の障害となっている。そこで1.太陽系初期凝縮物の一つであるコンドリュールに半減期の異なるAl-Mg系とFe-Ni系の年代測定を適用し、初期太陽系年代学の基礎的なデータを収集する、2.隕石を構成する主要なケイ酸塩鉱物中の元素の拡散速度を実験的に決定、3.隕石とその母天体における熱史の確立と初期太陽系年代学への影響を拡散の観点から定量的に明らかにする事を目的としている。平成26年度は上記のうち2.に主眼を置いた実験的研究を進めた。特に天然の単結晶の選定と結晶軸の決定に関しては慎重に行い、拡散実験に最適な試料の選定を行った。試料は実験に最適なサイズへの切り出しも終えており、拡散加熱実験を開始している。1.に関しては、本研究の目的に即した普通コンドライトの選定を岩石鉱物学的研究を最初に行うことで、SIMSによる年代測定に繋げていく。
2: おおむね順調に進展している
拡散実験に用いる天然エンスタタイト単結晶の選定と結晶軸方向の決定、結晶軸にそった試料の切り出しを丁寧に行う事で、以降の拡散加熱実験を順調に行う事が可能になっている。拡散加熱実験には加熱温度に応じて加熱時間が変化するが、これまでの研究結果を元にして数値計算を行い、最適な加熱時間を見積もり実行している。また年代測定に使用する隕石(特にコンドリュールの多い普通コンドライト)を研究分担者らと選定を進めており、岩石鉱物学的研究を開始した。
平成27年度は、拡散加熱済みの試料をSIMSによる深さ方向分析で分析を進める。なお、本測定法は研究代表者の過去の研究成果から、測定条件などを移行する事によりスムースに実行可能である。研究分担者らと進めている隕石の選定を進め、岩石鉱物学的研究が終わり次第、Al-MgとFe-Ni系の年代測定法を適用する。初期太陽系における異なる半減期の年代測定を同一試料に適用し、より詳細な年代の情報を得るとともに、母天体における年代の情報の撹乱についても知見を得る。
1.SIMS用消耗品のうち二次イオン検出器の劣化が平成26年度に顕著ではなかったため未交換、しかし検出シグナルの安定性の確保と検出効率の観点から平成27年度後半から平成28年度始めには交換予定である。2.研究支援パートタイマーの雇用開始が平成26年6月下旬までのびたため、雇用期間が当初予定の8割程度になった。以上の理由により次年度使用額が生じた。
1.平成27年度使用予定のSIMS用消耗品は既にリストアップ済みであり、購入しだい交換予定である2.研究支援パートタイマーの人件費に充てる
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Earth, Planets and Space
巻: 66:91 ページ: -
10.1186/1880-5981-66-91
巻: 66:102 ページ: -
10.1186/1880-5981-66-102
巻: 66:156 ページ: -
10.1186/s40623-014-0156-0
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10.1186/s40623-015-0182-6
Geochmica et Cosmochimica
巻: 144 ページ: 277-298
10.1016/j.gca.2014.08.017