研究課題/領域番号 |
26287142
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研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
伊藤 元雄 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 高知コア研究所, グループリーダー代理 (40606109)
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研究分担者 |
牛久保 孝行 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 高知コア研究所, 技術研究員 (10722837)
山口 亮 国立極地研究所, 研究教育系, 准教授 (70321560)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 元素の拡散 / 惑星の熱史 / SIMS |
研究実績の概要 |
隕石とその構成鉱物には太陽系の起源や現在に至るまでの進化の過程と年代についての情報が鉱物組織、鉱物の割合、構成元素の同位体組成比や希土類元素をはじめとする微量元素分布の形で記録されており、その当時の形成過程・時間経過を知る上で非常に重要な役目を果たす。地球上の鉱物と同様に隕石中の鉱物にもまた色々なスケールで種々の元素、あるいは同位体組成比の不均質性が観察され、鉱物生成後の熱的影響により元々の分布から変化したものであり、固体中の元素の拡散現象に大きく支配される。従って、鉱物中での元素の拡散速度から天然の鉱物中に見られる元素・同位体組成比の不均質分布から鉱物の熱史を定量的に解析する事ができる。このためケイ酸塩鉱物中の元素の拡散係数を求めるために多くの実験的研究がなされている。しかしデータの蓄積は未だに十分ではなく、また研究者ごとに拡散係数の値がオーダーを超えて異なる事があるなど、鉱物の熱史や放射性核種を用いた太陽系年代学の定量的議論の障害となっている。そこで、1.太陽系初期凝縮物の一つであるコンドリュールに半減期の異なるAl-Mg系とFe-Ni系の年代測定を適用し、初期太陽系年代学の基礎的なデータを収集する、2.隕石を構成する主要なケイ酸塩鉱物中の元素の拡散速度を実験的に決定、3.隕石とその母天体における熱史の確立と初期太陽系年代学への影響を拡散の観点から定量的に明らかにする事を目的としている。平成27年度は特に上記のうち2と3を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
拡散実験に用いる天然エンスタタイト単結晶の選定と結晶軸方向の決定、結晶軸にそった試料の切り出しを丁寧に行う事で、以降の拡散加熱実験を順調に行う事が可能になっている。拡散加熱実験には加熱温度に応じて加熱時間が変化するが、これまでの研究結果を元にして数値計算を行い、最適な加熱時間を見積もり実行している。また年代測定に使用する隕石(特にコンドリュールの多い普通コンドライト)を研究分担者らと選定を進めており、岩石鉱物学的研究を開始した。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、拡散加熱済みの試料をSIMSによる深さ方向分析をさらに進める。なお、本測定法は研究代表者の過去の研究成果から 、測定条件などを移行する事によりスムースに実行可能である。研究分担者らと進めている隕石の選定を進め、岩石鉱物学的研究が終わり次第、Al-Mg系の年代測定法を適用する。初期太陽系における異なる半減期の年代測定を同一試料に適用し、より詳細な年代の情報を得るとともに、母天体における年代の情報の撹乱についても知見を得る。
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次年度使用額が生じた理由 |
SIMS用消耗品のうち二次イオン検出器、セシウムイオン源などが想定よりも劣化が著しくなかったため交換を行わなかった。このため未使用額が生じた。しかし分析の安定性の確保と検出効率の観点から平成28年度中旬に交換が必要である。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度使用予定のSIMS用消耗品は既にリストアップ済みであり、購入しだい交換予定である。
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