研究課題/領域番号 |
26287143
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
井 通暁 東京大学, 新領域創成科学研究科, 准教授 (00324799)
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研究分担者 |
小野 靖 東京大学, 新領域創成科学研究科, 教授 (30214191)
今田 晋亮 名古屋大学, 太陽地球環境研究所, 助教 (40547965)
神尾 修治 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 助教 (80705525)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 宇宙・天体プラズマ / 磁気リコネクション |
研究実績の概要 |
本研究は磁気リコネクションによる粒子加速のメカニズムを実験的に解明することを主目的としており、今年度はガイド磁場比10程度の高ガイド磁場存在下でのリコネクション時に発生する電子加速を評価するために、小型エネルギー分析器による直接計測と、軟X線トモグラフィによる間接・空間分布計測を実施した。また、加速された電子がその後熱化する様子を観測するためにトムソン散乱計測を実施し、電子温度分布を計測した。 リコネクションX点位置に小型エネルギー分析器を設置し、電子のガイド磁場方向運動エネルギー分布を測定したところ、リコネクション初期には70%以上の電子が50eV以下の低エネルギー状態であり、ほぼ熱平衡とみなせたのに対し、リコネクション電場が最大になる時刻付近では、およそ20%の電子が200eV以上の高エネルギーを有しており、電子が磁場方向に強く加速されていることを示唆する結果を得た。また、およそ70eV以上の電子が発する制動放射光の空間分布を軟X線トモグラフィによって測定したところ、高エネルギー電子はリコネクションX点を中心とした領域に局在して発生することが明らかとなった。同様の傾向は、トムソン散乱によって計測したガイド磁場に垂直方向の電子温度分布からも確認されたことから、高ガイド磁場下での電子加速・加熱はリコネクションX点においてのみ選択的に発生する現象であると考えられる。 これらの結果は、数値シミュレーションなどで予測されているガイド磁場(ガイド磁場比4以下程度)下での非対称な電子加速領域とは大きく異なった特徴を示している。これまでは、加速された電子は容易にX点領域から流出するという認識が主流であったが、今回得られた実験結果は高ガイド磁場によってリコネクション過程が質的に変化したことを示唆するものであり、関連研究分野において特筆すべき成果であると言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高エネルギー電子を測定するため、本研究課題において開発を実施した二つの計測器である小型エネルギー分析器および軟X線トモグラフィの稼働を開始した。当初はプラズマ電位やコイルが作る磁場等の影響によるノイズや誤動作のため、正確な測定が困難であったが、各種ノイズ対策や正確な較正を実施することによって良好な測定結果が得られるようになった。特に、測定の結果明らかとなった電子加速・加熱が発生する局在領域は従来の予想を覆す発見であり、本研究をさらに発展させることによってリコネクション物理、特にエネルギー変換機構や高速化を解明するために大きな寄与が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の成果により、高ガイド磁場存在下でのリコネクションでは電子加速がX点近傍に局在していることが明らかとなった。ガイド磁場の効果を定量的に検証し、メカニズムの検証を進展させるためには、ガイド磁場比をパラメータとして適切に制御できるような実験環境の構築が不可欠となる。今後は、リコネクション中のみガイド磁場をパルス的に変化させる方式を実装することによって、プラズマ生成時に生じる差異の影響を完全に排除した実験を行うこととする。同時に、今年度開発・運用した各種電子エネルギー計測器の性能を向上させることに加えて、イオン流速を高時間分解能で計測することによって、ガイド磁場存在下のリコネクションにおける全エネルギーフローを解明することを目指す。
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