研究課題/領域番号 |
26287144
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
比村 治彦 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 准教授 (30311632)
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研究分担者 |
政宗 貞男 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 教授 (00157182)
三瓶 明希夫 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 講師 (90379066)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 非中性プラズマ / 2流体プラズマ / 電子プラズマ / リチウムイオンプラズマ / プラズマ閉じ込め / MCP付き蛍光盤 / ベータユークリプタイト / フィラメント |
研究実績の概要 |
プラズマの巨視的運動を記述する方法は1流体プラズマが代表であったが、近年、理論計算の進歩に伴い、2流体プラズマという扱い方が多くの分野で取り上げられている。この2流体プラズマ状態については、その存在を示唆するデータが出されつつあるものの、実験の難易度が高く詳細は不明である。そこで、新しい検証実験として、本研究ではイオン流体と電子流体を別々に生成し、異なる運動を行う初期状態におく。その後、それら2つの流体をマージングすることで理論計算が言う所の理想的な2流体プラズマを作り出し、その状態で生じるプラズマダイナミクスを観測し、その知見を理論計算と比較する。これらの研究により、2流体プラズマに対する基本的な考え方の枠組みを提示することを目指す。 研究初年度では (1) 実験装置の整備 (2) 低リップルDC電源による定常磁場の発生とリチウムイオンプラズマ閉じ込め時間1秒の達成 (3) 画像データ用処理プログラムの構築 (4) リチウムイオンプラズマと電子プラズマのマージング実験の開始、の4項目を計画していた。この中で、(1) – (3)の項目について完全に達成した。項目(1)では、装置の軸対称性と真空度の改善を行った。整備方法手順の詳細は省略する。項目(2)では、YAMABISHI製の直流安定化電源を購入し、この電源により定常磁場のリップル率を1%から0.1%程度以下へと低減した。リチウムイオンプラズマの閉じ込め時間伸長については、目標の1秒を上回る約4秒の閉じ込め時間得ている。項目(3)では、ソフトウェアに付属している機能を用いたマクロプログラムを完成させて、そのプログラムを画像データの処理に用いている。一方、項目(4)については、電源の出力電圧を上げるための改造と、実験室動力から回り込むノイズ除去に時間を取られたため、平成27年度へと先送りせざるを得なかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画していた4項目の内、3項目を完全に達成することができている。特に、かなりの研究時間を要すると覚悟していたリチウムイオンプラズマ閉じ込め伸長を達成できている点が大きい。この閉じ込め時間は約4秒におよんでいるが、これを外部回転電場等の安定化機構を用いず、イオン入射と閉じ込め電磁場の最適化だけで達成できていることは一つの成果である。 一方、特注の設備備品として購入したYAMABISHI製直流安定化電源の出力電圧がコイル負荷に対して不足してしまい、この出力電圧を上げるための追加改造に2か月を要した。また、実験室の移転があり、新しい実験室の電源ラインから回り込むコモンモードノイズに対する対策にも2か月費やした。この対策で、同じ建物の他の実験室が出すノイズがあることも判明したが、このノイズは除去できておらず、このノイズが現れていない時間帯に実験を行うなどの対処法で進めている。これらの事情により、項目(4)の実験課題が平成27年度計画へと先送られた。この点が、区分(2)と自己評価する理由である。
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今後の研究の推進方策 |
実験装置が順調に動き出しているので、平成27年度と28年度では、本研究計画を以下の16細目のテーマへと分けて実施していくことを研究グループ内で決定した。 (1) BX-U実験装置に関する論文の刊行 (2) イメージチャージ波形からのプラズマシフト量導出方法の確立 (3) 回転電場印加によるリチウムイオンプラズマ閉じ込め時間の伸長 (4) リチウムイオンによるMCP増幅特性 (5) リチウムイオンプラズマの閉じ込め時間の磁場および密度依存性 (6) 電子プラズマとリチウムイオンプラズマの同時閉じ込め時間の磁場および密度依存性 (7) 軸方向振動数と電流アンプを用いたリチウムイオンプラズマ密度測定 (8) 蛍光盤MCPによるブリルアン密度のリチウムイオンビームダイナミクス観測 (9) ミラー磁場下でのリチウムイオンプラズマ閉じ込め (10) リチウムイオンプラズマと電子プラズマの重畳時に生じる巨視的流体ダイナミクス (11) リチウムイオンプラズマと電子プラズマの重畳時に生じるリチウムイオンプラズマ径方向分布の変化 (12) リチウムイオンプラズマと電子プラズマの重畳時に生じる電子プラズマ径方向分布の変化 (13) S*をパラメータとした2流体プラズマ状態変化の実験的観測 (14) MCP電位極性を高速フリップさせることによるイオン流体と電子流体の連続撮影 (15) 重畳実験を模擬するシミュレーションコードの開発 (16) 実験データとシミュレーション結果の比較研究 この中で、平成27年度においては、番号(10)のテーマへと向けたスケジュールで研究を推進していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
申請金額の約65%の充足率だったために、当初予定していた水冷式直流電源を空冷式直流電源に変更したこと、直流電源の改造を行うために当初予定していたもう一つの直流電源の購入を先送りにしたこと、海外での学会発表を取りやめたこと等で、次年度使用額が生じている。
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次年度使用額の使用計画 |
上記の未実行項目については、平成27年度に実施する。
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