研究課題/領域番号 |
26287145
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
河仲 準二 大阪大学, レーザーエネルギー学研究センター, 准教授 (50264362)
|
研究分担者 |
時田 茂樹 大阪大学, レーザーエネルギー学研究センター, 講師 (20456825)
西岡 一 電気通信大学, 情報理工学(系)研究科, 教授 (70180586)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | ラマン圧縮 / ラマン増幅 / 超短パルスレーザー / 超高強度レーザー / プラズマ科学 / 量子エレクトロニクス |
研究実績の概要 |
後方ラマン散乱による超高強度超短パルスレーザー開発において、既存の高出力レーザー(1J, 100Hz)の一部(~500mJ, 1ns, 1030nm)をチャープパルス(CPA)増幅後にパルス圧縮器で時間圧縮し、励起用レーザー(~300mJ, 10~100ps, 1030nm)を発生した。本装置は実験の要となる装置であるので、高出力レーザーのレーザー増幅器を冷却している液体窒素冷却器をギフォード・マクマホン(GM)冷凍機へと変更し、操作性の向上と24時間運転を実現した。これにより今後の研究・開発の高効率化を図った。また、後方ラマン散乱に必要なもう一方の信号用レーザーの発生を試みた。前述の改良された高出力レーザーの発振器からの光の一部をCPA増幅してパルス圧縮後に高非線形ファイバーに集光照射し白色光を発生し、そのスペクトルの一部(波長1157nm, スペクトル幅~50nm)をパルス圧縮して信号用レーザー(~10uJ, ~100fs)を発生するのに成功した。 一方、プラズマ波によるラマン散乱モデルの構築と散乱過程の解明を目的として、高次の前方および後方ラマン散乱過程を含むモデルを構築し、これに基づいた計算コードの開発を開始した。これを用いて数値計算を行い既知の物質による基本的なラマン散乱過程を再現することができコードの有効性を示せた。今後、候補のラマン材料に変更して動作状況を再現し、確立後に最適化及び高強度化を検討し、ラマン散乱の最適化条件と増幅の制限要因を解明してゆく。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
後方ラマン散乱に必要な励起レーザーの開発にあたっては、当初、既存のレーザー装置を利用していたが、レーザー増幅部に必要な液体窒素冷却器の数時間の動作時間では予想以上に作業効率が悪くなっていることに気づき、今後の作業効率を向上するためGM冷凍機への変更を行った。冷凍機の機械的振動がレーザー出力に与える影響は大きく、除振構造を独自に開発するなどしてかなりの開発時間が必要であったが、24時間運転が可能となった。
|
今後の研究の推進方策 |
レーザー誘起プラズマ波による後方ラマン散乱を利用した超高強度超短パルスレーザーの開発として、励起用・信号用レーザーの高機能化をすすめる。ラマン散乱はラマン媒質とレーザーとの非線形な相互作用に基づくため、基礎データの取得を始め超高強度超短パルスレーザーの開発に至るまでこれらの安定な動作は実験において重要な鍵となる。このため、レーザー光の時間波形、パルス幅、入射タイミング、レーザー出力などが容易に制御できるように改良する。一方、前年度の計算コード開発をさらに押し進め散乱過程の大まかな理解を得て、ラマン媒質やレーザー条件の具体的な計算コード開発を行う。レーザー利得、利得帯域、効率など多様なレーザースペックに対してラマン媒質に要求される特性を明確にし、最適化条件と増幅制限要因の系統的な探索をすすめる。また、ラマン媒質となる安定なプラズマ源の開発を行い、励起用レーザーと信号用レーザーを使ってラマン散乱による圧縮実験を行う予定である。これらを適宜、調整しながら物理の解明と装置の実用化を図る。
|
次年度使用額が生じた理由 |
今後の研究・開発の効率化を図るため、本年度、励起用レーザーの簡易操作性と24時間運転を実現するために多くの時間を割いた。結果、新しいアイデアによるレーザー開発が進捗し学会等への発表が多くなった。一方で、数値解析が進みが多少であるが悪くなりこれに基づいて設計すべきガスセル等の購入ができなかった。
|
次年度使用額の使用計画 |
数値解析は、その後の最適化と合わせて行い、計画とおりにもどすように配慮した。また、平成26年度に行う予定であった実験系の準備は本年度の計画に入れ込んでいる。
|