研究課題/領域番号 |
26287148
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研究機関 | 核融合科学研究所 |
研究代表者 |
後藤 基志 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 准教授 (00290916)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 偏光プラズマ分光 / 非等方的速度分布 / 真空紫外分光 |
研究実績の概要 |
平成27年度はスケジュールの変更により大型ヘリカル装置LHD実験が行われなかったため、平成26年度の実験において明らかとなった問題を解決するため主に計測機器の改造を行った。 本研究では、発光線のストークスパラメータ(I、Q、U)を求めることが主要な課題であるが、そのためにはふたつの直交する直線偏光成分を同時に計測する必要がある。ひとつの検出器でふたつの直線偏光成分を計測するため、分光器の入り口スリット前に設置した1/2波長板を高速(10Hz程度)で回転させることにより検出光の偏光状態を回転させ、それに同期してある固定された方向の直線偏光成分を測定する。観測対象のプラズマがほぼ定常的であると仮定できれば、正確には同時計測ではないが、実効的に任意の角度の直線偏光成分が測定され、上記のストークスパラメータを求めることが可能となる。 初年度(平成26年度)はDCモーターにより1/2波長板を回転させ、モーターからのエンコーダ出力を頼りに回転角を求める手法で計測を行ったが、回転速度が安定せず、検出器との同期を取るのが困難であることが判明したため、パルスモーターに交換し回転速度を正確に制御できるよう改造を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度(平成26年度)の実験では上記のようにDCモーターの回転速度が不安定であることが判明し、その他にも、検出器の焦点位置合わせが不十分であったことも実験終了後に明らかになり、十分な量と精度の計測データを取得することができなかった。この程度の問題は予想の範囲内であり、問題解決のため計測装置の改良を行った。 しかしながら、平成27年度は装置のトラブルによりスケジュール変更がありLHD実験が完全にキャンセルされ、改良した機器を用いた計測を全く行うことができなかった。LHD実験は1年のうちの4か月程度の期間に集中して実施されるため、実験キャンセルにより全ての計画について1年間の遅れを生ずる。本研究はLHD実験での計測が中心課題であり、したがって本研究計画も1年の遅れを生ずることは避けられなかった。LHDはこれまで17年間にわたり実験を遂行してきたが、完全に実験がキャンセルとなったことは今回が初めてであり予想することは困難であった。
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今後の研究の推進方策 |
上で述べたように平成27年度の予定されていたLHD実験が完全にキャンセルされたため、本研究の計画は1年の遅れを生ずることとなった。したがって、本研究課題は平成28年度が最終年度であるが、1年延長し平成29年度まで継続したい。LHD実験は平成29年2月から予定されている。また、その次の実験実施時期は平成30年度以降となる予定のため、本研究において利用できる実験は次回が最後となる。 平成28年度は、昨年度に改良した計測機器の最終調整を行い、万全の体制で実験に臨む。当初は最初に炭素イオンの発光線を計測および解析したのち、水素原子のライマンアルファ線に取り組む予定であったが、LHD実験スケジュールの変更により、両発光線の解析を同時に進めることとする。炭素イオンの発光線154.9nmに対しては最終段の偏光分離光学系の効率に不確定性があるため、分子科学研究所の放射光施設を利用して、その消光比を精度よく求める。 計測機器整備と並行して解析コードの開発を進める。ライマンアルファ線については基礎データの入手はできているため、炭素イオン発光線に関するデータ収集を行う。両発光線は量子力学的には同じ性質を持つため、基礎データの入れ替えだけでコードの共有ができる。実験開始までに汎用コードの構築を行う。実験開始後はデータ収集に集中し、さまざまなタイプの放電において計測を実施する。 LHD実験は平成29年度の始めまで継続して実施される予定であり、実験終了後直ちにデータ解析に着手する。目標は、有意に発光線が偏光していることの確認と、偏光を生じるメカニズムの同定である。可能な限り迅速に最初の目標を達成し、ふたつめの目標についても年度内に論文発表に値する成果を挙げたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定されていたLHD実験がキャンセルとなったため、実験を遂行するための真空部品、光学部品等の購入がなされなかった。また、学会等での成果発表のための旅費も使用しなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度実験を遂行するために必要な銅ガスケットなどの真空部品と、検出器の焦点合わせのために必要な光学部品の購入を行う。実験は年度末に行われるので本年度の実験の成果を学会等で発表することはできないが、理論モデルの構築と計算例について学会等で発表する予定であり、そのための旅費として使用する予定である。
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