研究課題/領域番号 |
26287148
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研究機関 | 核融合科学研究所 |
研究代表者 |
後藤 基志 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 准教授 (00290916)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 偏光プラズマ分光 / 非等方的電子速度分布関数 |
研究実績の概要 |
1/2波長板及び偏光アナライザの挿入機構に関して、遠隔制御のための機器の状態信号の取り合い部分の改造を行った。これまでは挿入及び退避の移動完了を確認することができなかったが、リミットスイッチ信号を新たに設置することで移動の完了が確認できるようになった。さらに、パルスモーター駆動のための電圧パルス信号を取得し、1/2波長板の遅延軸方向を確認するための信号として整備した。ただし、パルス信号の周波数が高く、使用するアナログ-デジタル変換器のサンプリング周波数を超えていたため、パルスカウンターを導入し信号の周波数を下げることで、1/2波長板1回転を100分割する各角度位置が確認できるような仕様とした。本目的のためにはこの程度の分解能で十分である。 LHDのプラズマに対して実際に計測を行った。1/2波長板を0.8秒周期で回転させ、50msごとにスペクトル計測を行った。この場合、縦と横の直線偏光成分を、0度、45度、90度方向の直線偏光成分を順番に計測することになる。定常的な放電に対して連続して計測を行ったところ、発光線の強度の変調周期が1/2波長板の回転周期と一致しており、偏光の検出に成功したことを確認した。観測された偏光度は発光線プロファイルのピーク位置で約5%程度であった。加熱パワーと電子密度をスキャンし、偏光度のこれらのパラメータに対する依存性を調べるためのデータを取得した。 本研究では水素原子のライマンアルファ線(121.6nm)と炭素イオンの発光線(154.9 nm)を計測の対象とするが、偏光選択のための光学素子はライマンアルファ線の波長で最適化されており、炭素イオン発光線の波長での特性が不明であるため、分子科学研究所の放射光施設UVSORにおいてそれら光学素子の特性評価を行ない、炭素イオン発光線に関しても定量的な解析が可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
LHDでは約2年間実験が行われなかったため、平成28年度は研究を進展させることができなかった。そのため、研究期間の1年間延長を申請し承認された。本研究はLHDでの実験に基づくものであり、LHD実験のキャンセルによる進捗の遅れは避けられなかった。
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今後の研究の推進方策 |
実験は平成29年2月に開始し、ただちにデータ取得を試み、休止期間中に行なった光学素子の駆動機構の改良および検出器の焦点位置調整の有効性を確認した。現在、試験的に継続して計測を行っており、偏光分離計測が有効に機能することが確認された。今期の実験終了までに2度のマシンタイムが予定されており、偏光特性の加熱パワーや電子密度への依存性を確認する。現在は主に水素原子ライマンアルファ線を観測対象にしているため、ライマンアルファ線用の1/2波長板を利用しているが、2度目のマシンタイムでは炭素イオンの発光線用の1/2波長板に変更し、炭素イオン発光線の偏光計測の精度向上を図る。モデル計算コードは現在開発中である。必要な原子データはすでに入手しており、また、プラズマ物理の理論計算から得られる電子の速度分布の非等方性データの準備も進めている。複雑なLHDの3次元形状と観測視野を考慮に入れ、現実の計測結果と直接比較できるフォワードモデルを構築し、実験データ解析に利用する予定である。研究期間終了までに、LHDプラズマ中電子の速度分布関数の非等方性に関して、理論計算の結果の妥当性について定量的な評価ができるところまで到達したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定されていたLHD実験がキャンセルされたため、実験を遂行しながら機器調整を行うために必要な真空部品および光学機器購入の費用が発生しなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度8月3日まで実験を行う予定であり、その間機器調整に必要な真空部品およびデータ保存のためのハードディスクを購入する。また、2回の国内学会での成果発表を予定しており、そのための旅費として使用する。
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