LHD実験において水素原子ライマンアルファ線の偏光分離計測を行い、最大5%程度の偏光度が得られた。中性原子の主な発光位置はプラズマ外縁部に固定されていることが確認されており、その位置での電子密度を用いてさまざまな放電に対して得られた結果を整理すると、偏光度は電子密度上昇とともに減少する傾向があることを確認した。電子密度上昇とともに電子の速度分布の非等方性は失われると考えられ、また、電子衝突による偏光緩和も有効になると考えられるため、この計測結果は定性的には予想されるものであった。しかしながら、高電子密度領域においても偏光度がゼロに漸近せず、2.5%程度のオフセットがあるように見受けられる。オフセットの原因は現在のところ不明である。したがって、実質的な偏光度は最大2.5%程度であると考えられる。計測は異なる磁場配位の放電に対しても行ったが、明確な磁場配位依存性は見られなかった。 計測結果の定量的理解のため、偏光を考慮に入れた衝突輻射モデルを構築した。このモデルは、各準位について、通常の衝突輻射モデルで扱われるポピュレーションに加え、磁気副準位間のポピュレーションの不均一性を表すアライメントという量を導入し、それらの量から観測される発光線の偏光特性を求めるものである。磁場に垂直および平行方向で温度が異なるような電子の速度分布関数を仮定し、磁場方向および磁場に垂直方向の直線偏光成分の強度を求めたところ、10%程度の温度の違いがあれば観測された偏光度を生じうることが確認された。
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