液液界面でのイオン輸送を、従来の現象論を超えた新たな視点で解明した。界面をイオンが通過する際には、油相中に入ったイオンが水和水を引き連れてwater finger構造を作ることが計算化学で予想されていたが、本研究ではそのwater finger構造の形成と切断を表す適切な座標を、水の水素結合ネットワークの連結性に基づいてグラフ理論から簡便に定義できることを示した。その座標上を用いた自由エネルギーを分子シミュレーションによって計算し、その構造遷移に伴って隠れた自由エネルギー障壁が存在することを明らかとした。これによって、液液界面のイオン移動速度が拡散律速よりも数桁遅くなる理由を解明した。
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