(1)レーザーアシステッド電子散乱観測装置の高精度校正 レーザーアシステッド電子散乱における干渉構造を定量的に解析するためには、観測装置の高精度なエネルギー校正と散乱角度校正が必要である。本研究では、電子分析器にマスクパターンを設置して、弾性散乱電子や非弾性散乱電子を検出することにより、電子分析器の微調整を行うとともに、分析器の校正を実施した。その結果、エネルギーシフト量として ±5 eV に渡る領域で散乱電子を高精度で検出できることが確認された。 (2)sub-10 fs レーザーパルスの発生 中空ファイバー圧縮法を用いた数サイクルレーザーパルス発生装置を開発した。中空ファイバー中に導入するアルゴンガスの圧力や入射レーザー光強度、チャープミラーによる反射回数の最適化を行うことによって、パルス幅 9.1 fs の超短レーザーパルスの発生に成功した。 (3)sub-10 fs レーザーパルスによるレーザーアシステッド電子散乱信号の数値シミュレーション 広帯域超短レーザーパルスによって誘起されるレーザーアシステッド電子散乱信号を計算するプログラムを開発した。このプログラムでは、分子ビーム・電子ビーム・レーザービームの時空間的な重なりに由来する平均化が考慮されており、実際の実験結果を定量的に議論することが可能となる。項目(2)で発生させたパルス幅 9.1 fs の超短レーザーパルスによるレーザーアシステッド電子散乱信号を計算したところ、散乱電子のエネルギー分布にレーザーパルスの電場波形に由来する干渉パターンが現れることが確認され、本研究課題の目標である「レーザーアシステッド散乱電子によるスペクトル干渉」の観測が実際に可能であることが示された。
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