研究課題/領域番号 |
26288005
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
唯 美津木 名古屋大学, 物質科学国際研究センター, 教授 (70396810)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 固体触媒 / 構造解析 / XAFS / 顕微分光 / イメージング |
研究実績の概要 |
本研究では、一般に不均質で複雑な構造を有するリアル系の固体触媒材料を対象として、XAFS分光法にイメージングを組み合わせたXAFSイメージング手法を用いて、固体触媒材料のミクロ、ナノ構造の違いを空間的に可視化することを目指している。平成27年度は以下の課題を実施した。 (1) Pt粒子接触型Ce2Zr2Ox排ガス浄化触媒粒子のCe酸化状態の可視化 平成26年度に調製方法を確立したPt粒子接触型Ce2Zr2Ox触媒粒子について、Ce L3端の2次元走査型顕微XAFS計測の検討結果を踏まえて、100μmごとにPtのグリッドを入れたSiN基板を作成し、その表面にPt粒子接触型Ce2Zr2Ox触媒粒子を担持した。この試料を、作成した顕微XAFS用の反応セルに入れ、排ガス浄化の鍵過程の一つである酸素吸蔵・放出過程に相当する酸化反応・還元反応を行い、それらの過程においてCe2Zr2Ox担体粒子内部のCe価数が空間的にどのように変化していくかを2次元走査型顕微XAFS法により明らかにした。酸化過程では、Ptの担持によらず速やかに酸素吸蔵が進行するのに対し、還元過程では、Ptの担持、接触の違いによって、粒子ごとの反応性の違いが観察され、触媒種であるPtを起点とした酸素放出過程における酸素拡散の様子を可視化することに成功した。 (2) FeおよびCe酸化物ナノ~マイクロ構造体試料の作成と走査型顕微XAFSによる構造評価 異方性を有する酸化鉄マイクロ構造体の合成、100度程度の低温で酸素吸蔵・放出を可逆的に進行させるCe-Cr-Rh-Ox酸化物複合体を合成した。それらの酸化還元特性を明らかにし、XAFS計測から酸化還元過程における各金属種の価数変化の帰属を行った。さらに走査型顕微XAFS法により、異方性を有するFeOx材料の各部位のXAFSスペクトル測定における空間分解能を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度の交付申請書に基づいて、計画的に研究を実施している。
概要における項目(1)のPt接触型Ce2Zr2Ox触媒粒子のCe酸化状態の2次元可視化は、必要な実験をすべて終え、きわめて明瞭なイメージングデータを得ることができた。現在原著論文の最終の取り纏めを行っており、H28年5月に投稿を予定している。
概要における項目(2)については、試料調製、酸化還元特性の解明、材料のキャラクタリゼーションを終え、本年度に予定している顕微XAFS計測によって、材料の構造異方性と酸化還元特性、触媒劣化の空間イメージングを実施する予定であり、この本実験に向けた準備も順調に進んでいる状況にある。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は最終年度であるので、概要における項目(1)の結果の論文投稿、項目(2)の顕微XAFSイメージング測定を行い、成果のまとめを重点的に進める予定である。項目(2)については、本年度中に実験を終え、原著論文として成果発表できるように研究のまとめを進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
基金分について、次年度使用額が生じた。SPring-8におけるXAFS計測のマシンタイムの関係で、酸化鉄触媒の顕微XAFS計測を平成28年度に実施することになり、マシンタイムへの出張旅費の使用を次年度に繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
7月にSPring-8における顕微XAFS測定を予定しており、このマシンタイムにかかる旅費、物品に使用する予定である。
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