研究課題/領域番号 |
26288011
|
研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
坪井 泰之 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 教授 (00283698)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 光圧 / 輻射力 / 温度勾配 / Soret力 / 共焦点顕微鏡 / レーザービーム / ナノ粒子 / 非線形分極 |
研究実績の概要 |
光の輻射圧を利用して微小物体を捕捉し、操る方法論を光マニピュレーション(光ピンセット)と呼ぶ。これを「分子」を操ることのできる「物理化学的」な方法論に昇華するために、輻射圧を増強する新たな原理として、本申請課題では「光共鳴マニピュレーション法」を提案する。輻射圧を生み出す光が、捕捉対象物(ナノ粒子~分子系)の電子遷移を同時に共鳴励起する時、その分極が起きくなるため、輻射圧(双極子勾配力)が著しく増強されると予想される。この原理を実証し、分子系の光マニピュレーションを実現する のが本研究の大きな目的である。これに、プラズモン増強電場や光ビームデザイン(フェムト秒光パルスの導入)を併用し、光の波長よりも小さなナノ粒子や分子系の光マニピュレーション方法や選択的マニピュレーションの確立とその機構の解明を目指す。
プラズモン光共鳴捕捉を達成するためには、局在表面プラズモンの励起光波長と捕捉対象物の吸収帯を一致させる必要がある (共鳴励起)。まず、非共鳴励起条件のYG粒子のプラズモンによる光捕捉を試みた。捕捉された粒子数に対応する発光強度の増加度は僅かであり、高強度の近赤外光を入射しなければ捕捉過程を顕微鏡観察できなかった。一方、共鳴励起条件におけるNIR粒子の捕捉を試みた結果、発光強度の著しい増加が見られた。発光強度の励起光強度依存性および種々の対照実験の結果などから、本研究成果が「プラズモン光共鳴捕捉」の実証モデルになりうると期待される。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2014年度は プラズモン光補足と光共鳴マニピュレーションのコンビネーションを研究した。光共鳴効果励起条件で実際に輻射力の向上が観測された点は意義深い。1.ギャップモード局在表面プラズモンによる光捕捉は、従来の光ピンセットよりも~ 103倍低いレーザー強度でナノ粒子を捕捉できる。2.世界最小クラスの量子ドットのプラズモン光捕捉に成功した。3.量子ドットは単量体と会合体状態で、プラズモンによる運動制御が異なることを発光スペクトル測定により明らかにした。4.色素担時ポリスチレン粒子を用いて、新たなプラズモン光捕捉法―共鳴プラズモン光捕捉―を提案した。 このような成果から、研究はおおむね順調に推移していると結論した。
|
今後の研究の推進方策 |
今回新たに提案する「共鳴プラズモン光捕捉」は既報のプラズモン光捕捉に比べ、より強い捕捉力を有していると期待される。今後、表面プラズモンの「分子分析場」「光化学反応場」に加え、表面プラズモンの「分子運動制御場」の確立を目指す。 各論として、以下の項目を2015年度は調査する。 1)共鳴効果の理論的な検証: 石原(大阪府立大)らによる共鳴効果の理論では、輻射圧は最大10の4条倍程度まで増加するとされているが、実際の観測では10倍程度の増強である。このギャップを説明する。 2)励起波長効果: 光共鳴では、捕捉物体の吸収極大に関し、低エネルギー側では輻射力の増強が起こり。高エネルギー側では逆に斥力が増すと予想される。この効果を駆使すると、選択的光マニピュレーションの実現も視野に入ってくるが、その効果を実際にきちんと確かめた例は少ない。この点を追求したい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究の予想以上の進展のため
|
次年度使用額の使用計画 |
適切に取り扱う
|