集光レーザービーム型、プラズモン増強型の光マニピュレーション型により、光共鳴マニピュレーションの探索と特徴を探った。その主な成果は以下の二点である。 (1) 蛍光性色素会合体の選択的捕捉の実現 プラズモン光ピンセットはプラズモンによる増強輻射力に基づいている。そのため捕捉対象物の分極率、すなわちナノ粒子を構成する分子の配向が捕捉挙動に鋭敏に反映すると考えられる。そこで、分子配向の異なる2種類のJ、H色素会合体のプラズモン光捕捉の実証を試みた。 すると、J会合体がH会合体よりも効率良く捕捉されたことがわかった。このような捕捉効率の差は、JおよびH会合体中の分子配向の差に起因していると考えられる。分子配向に基づく、プラズモン光ピンセットを用いた分子会合体の選択的捕捉をはじめて実現した。 (2)ノンプラズモニック―ナノ構造増強光マニピュレーションの実現 光共鳴マニピュレーション法とプラズモン光マニピュレーション法を組み合わせようする場合、スペクトル上でプラズモン共鳴帯と捕捉粒子の吸収体を重ねることになる。実験場、これは非常に大きな制約となる。この問題を克服できる電場増強能を有するナノ構造体として、安価で作製容易なブラックシリコン (B-Si) に注目した。B-Siは簡便に作製でき、電場増強能がある半導体材料である。また、ほぼすべての波長域で増強能(散乱により光閉じ込め)を有し、共鳴法と極めてよくマッチする。本研究では、B-Si基板の電場増強能を利用した捕捉法を提案し、ナノ粒子の光捕捉実験を行い、捕捉メカニズムについて考察した。その結果粒径200~500 nmのポリスチレンナノナノ粒子を効果的に光捕捉できることを明らかにした。本研究から、B-Si基板を用いた光捕捉法の有用性を示し、光ピンセット研究の発展や化学・生物分野への展開が期待できる。
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