研究実績の概要 |
1)1.5T級マグネットの製作:本研究で設計・製作を進めてきたREBCOコイルを完成させた。先ず磁性体フランジを取り付けない状態で試験を行い、その後磁性体フランジを取り付けて試験を行った。磁性体フランジを取り付けることで中心発生磁場が 23%上昇し、本研究で採用した磁性体フランジを用いた磁場分布調整の方法が発生磁場上昇に有効で、磁場分布に悪影響を与えないことがわかった。また、減圧液体窒素(66.9K)中で1.65Tを安定して発生させることが出来た。
2)NMR計測:上記1)の液体窒素冷却マグネットを用いて、プロトンNMR測定を行った。1.5Tにおいて、励磁後の磁場変動の様子を測定した。A)電流ゼロの状態から1.5T(63.8A)に単調に磁場を上げて保持する場合、及び、B)一旦68Aまで上げてから63.8Aに戻して保持する場合の試験を行った。REBCO線材の場合は遮蔽電流の影響が大きいため、A)の場合は電流保持後しばらくは磁場が上昇して安定に至り、B)の場合はしばらく磁場が下降してから安定に至った。また、xyzステージを作製して1.0Tにおける磁場均一度測定を行った。磁場中心±1mmの範囲で測定を行い、2mm x 2mm x 2 mmの領域で0.1%程度であった。NMRスペクトルの線幅は1,000pppm程度であり、先に試験した0.5T級マグネット(Bi-2223コイル)の場合の150ppm程度と比べて大きく、局所的な磁場均一度(或いは磁場分布)に差がある(0.5T級コイルの方が磁場の均一性が良好である)ことがわかった。これは、0.5T級マグネットがソレノイド巻線で且つ軸方向が長い良好な磁場分布が得られやすいコイル形状であるのに対し、1.5T級マグネットがダブルパンケーキ積層で且つ縦横比も小さく高磁場均一度を得るのに不利な形状であったことに由来すると考えている。
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