研究課題/領域番号 |
26288014
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
國信 洋一郎 東京大学, 薬学研究科(研究院), ERATOグループリーダー(准教授相当) (40372685)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | C-H結合変換 / 非共有結合性相互作用 / 水素結合 / Lewis酸-塩基相互作用 / ボリル化 / シリル化 / メタ位 / オルト位 |
研究実績の概要 |
本研究では、Lewis酸-塩基相互作用や水素結合のような非共有結合性相互作用を利用する、高位置選択的な炭素-水素(C-H)結合変換反応を開発することを目的として研究を遂行した。C-H結合活性化を経る変換反応では、従来の有機合成反応に比べ、反応工程数の短略化や副生成物の低減などが期待できる。さらに、従来の有機合成反応の代替やこれまでに合成できなかった化合物の合成が可能になることが期待される。配向基の利用によるC-H結合変換反応の開発は世界中で盛んに行われているものの、基質や生成物に大きな制限がある。そのような問題を解決するため、非共有結合性相互作用を利用するC-H変換反応の開発を行なった。私はすでに、2つの基質の官能基間でのLewis酸-塩基相互作用を用いることで、芳香族化合物のオルト位選択的なC-Hボリル化に成功していたが、この概念をヒドロフルオロシランに適用することにより、オルト位選択的なC-Hシリル化反応を達成した。また、触媒配位子と基質の官能基間での水素結合を利用することにより、メタ位選択的なC-Hボリル化反応を開発することにも成功した。本反応は、水素結合によりC-H結合変換反応の位置選択性を制御した初めての例である。さらに、非共有結合性相互作用を利用する分子間でのC(sp2)-H/ C(sp2)-Hカップリング反応の予備検討として、分子内でのC(sp2)-H/ C(sp2)-Hカップリング反応による含ヘテロ原子π共役系化合物の合成を達成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度の当初計画通り、「Lewis酸-塩基相互作用を利用するC(sp2)-H結合変換反応の開発」および「水素結合を利用するメタ位選択的なC(sp2)-H結合変換反応の開発」に成功した。もう1つの予定していた課題である「Lewis酸-塩基相互作用を利用するC(sp2)-H/ C(sp2)-Hカップリング反応の開発」については想定した反応は進行していないものの、その予備的検討である分子内でのC(sp2)-H/ C(sp2)-Hカップリング反応による含ヘテロ原子π共役系化合物の合成に成功した。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度以降は、平成26年度の研究課題を引き続き検討するとともに、位置選択的なC(sp3)-H結合変換反応の開発を行なう予定であったが、平成26年度に得られた成果に鑑み、位置選択的なC(sp2)-H結合変換反応をさらに開発していくことも、本研究の発展には重要だと考えるようになった。「水素結合を利用するメタ位選択的なC(sp2)-H結合変換反応の開発」で得られた知見に基づき、触媒配位子と基質の官能基間での非共有結合性相互作用を利用することで、パラ位選択的なC(sp2)-H結合変換反応や、水素結合より強固な結合であるLewis酸-塩基相互作用を利用する位置選択的なC-H結合変換反応について、検討していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年11月、反応探索実験を行なった結果、予備実験にて設計したルイス酸-塩基相互作用を利用するC(sp2)-H/C(sp2)-Hカップリング反応に用いる2種類の化合物において、それらがより強く相互作用する化合物を調製しなければ、目的のカップリング反応を進行させられないと判明したため、文献調査を基に2種類の化合物を再設計し、反応探索実験をやり直す必要が生じたため。
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次年度使用額の使用計画 |
物品費に該当する薬品(基質や基質の合成原料となる有機化合物、原料合成や反応探索時に触媒として用いる遷移金属錯体および塩、原料合成や反応探索時の反応、および化合物精製に用いる有機溶媒、NMR測定に用いる重溶媒)や実験器具(シュレンクやフラスコに代表される各種実験器具、NMRチューブ、など)の購入費用として利用する予定である。
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