研究実績の概要 |
本研究では、Lewis酸-塩基相互作用や水素結合のような非共有結合性相互作用を利用する、高位置選択的な炭素-水素(C-H)結合変換反応を開発することを目的として研究を遂行した。C-H結合活性化を経る変換反応では、従来の有機合成反応に比べ、反応工程数の短略化や副生成物の低減などが期待できる。さらに、従来の有機合成反応の代替やこれまで合成できなかった化合物の合成が可能になることが期待される。前年度に、触媒配位子と基質の官能基間での水素結合を利用することにより、メタ位選択的なC-Hボイル化反応を開発することに成功した。本反応は、水素結合によりC-H結合変換反応の位置選択性を制御した初めての例であり、Nature Chemistry誌に掲載していただくことができた(Nature Chem. 2015, 7, 712)。本研究に関しては、プレスリリースするとともに、様々な新聞や紹介記事で取り上げていただくことができた。さらに、非共有結合性相互作用を利用する分子間でのC(sp2)-H/C(sp2)-Hカップリング反応の予備検討として、分子内でのC(sp2)-H/C(sp2)-Hカップリング反応による含ヘテロ原子π共役系化合物の合成を達成し、学術論文として報告した(Chem. Eur. J. 2015, 21, 8365)。また、2つの基質間でのLewis酸-塩基相互作用を利用する芳香族化合物のオルト位選択的なC-Hシリル化反応についても、学術論文として報告した(Org. Lett. 2015, 17, 1758)。
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