研究課題/領域番号 |
26288015
|
研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
草間 博之 学習院大学, 理学部, 教授 (30242100)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | アシルシラン / 光異性化 / カルベン / 複素環 |
研究実績の概要 |
本研究では、同時に二つの結合形成を担える二配位炭素化学種「カルベン」を活用し、多環性炭素骨格や複素環骨格を短工程・高効率で合成する革新的合成手法の開拓を目指して研究を実施している。具体的には、これまで有機合成にほとんど用いられたことのなかったアシルシランの光異性化によるシロキシカルベン生成に着目し、光を駆動力とする新規環状骨格形成手法の開発を試みた。 その結果、申請者らがこれまでに開発に成功していたアシルシランとボロン酸エステルとの光化学的カップリング反応を基盤とし、反応基質を適切に設計することで、トランス縮環骨格の簡便な構築が可能であることを見いだした。次年度以降の詳細な検討により、確実かつ独創的なトランス縮環構造構築手法が開発できると期待される。 またその他の検討により、シロキシカルベン種はキノリン類とイリドを形成することを見いだし、ここで生じるイリドはアルケン類と付加環化反応を起こして含窒素多環性化合物を一挙に与えることも見いだした。 さらに、アシルシランと電子豊富アルケンの混合物に二酸化炭素雰囲気下で光照射を行うと、三成分がカップリングした五員環ラクトンが低収率ながらも生成することを発見した。現時点でこの反応の効率は低いが、今後反応機構を含めて詳細な検討を実施することにより、新規なブチロラクトン合成法の開拓も期待される。 以上の成果は、アシルシランの光異性化で生じるシロキシカルベンの反応性を活かすことにより、有用環状化合物が簡便に合成可能となることを示しており、更なる研究展開によって実用的かつ独創的な物質合成手法の開拓が期待される。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アシルシランの光異性化で生じるカルベン種を活用した新規環状骨格構築法を開拓するという研究目的に対し、今年度の検討により多様な環状骨格構築手法の確立に向けて複数の重要な基礎的知見を得ることに成功していることから、おおむね順調に研究が進展していると判断される。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度の検討で得られた知見を基盤とし、まず、新規トランス縮環骨格構築手法の確立に向けて、反応基質デザインとその簡便な合成法の確立、鍵となる光反応の精査を行う。またその他の環状骨格構築反応に関しても精力的に検討を実施することで多様な環状骨格構築手法の確立を目指す。 また、シロキシカルベンの新たな反応性の開拓に向けて、遷移金属化合物との相互作用を活かした反応開発にも着手し、さらに独創的な分子変換法の開発研究を展開する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
アシルシランからの光異性化で発生するシロキシカルベンの反応性を巧みに活かした新規環状骨格構築手法の開拓を目指し、その基盤となるいくつかの知見を得ることができているため、本研究はおおむね当初計画に沿って進行しているとは言えるものの、一方で、本年度は多様な反応基質を使った反応の一般性の検討や反応機構解析等を本格的に検討する段階までには至っていないのも事実である。このため、本課題の研究費として最も大きな金額を占める予定の各種薬品等消耗品類の購入に当初計画とのズレが生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
前述のように本年度の検討により各種反応開発のための基礎的知見が得られたことから、27年度は本格的な反応条件検討、基質検討、反応機構解析に取り組むことが可能となる。このため、消耗品の購入に要する金額が大きくなることが予想されるため、次年度使用額と27年度配分額を合わせ、当初予算申請通りに物品費(主に消耗品費)として効果的に使用する計画である。
|