研究課題
近年、外部と隔離された内部空間をもつカゴ型分子の構築に注目が集まっている。これらは、物質を取り込み、さらに取り込んだ物質を反応させる場としての応用面から活発に研究が行われている。これまでに、有機分子骨格や錯体分子骨格を利用したカゴ型構造の構築法が確立されてきており、その特異な空間における分子の反応性などが明らかにされてきた。しかしながら、これまでの多くのカゴ型分子は、物質の取り込み速度や放出の速度を「自然に任せて」きた。すなわち、取り込み速度は、カゴ型骨格にもともと備わっている隙間の大きさと取り込まれるゲストの大きさの相対的な関係により決まるものという認識で研究が行われてきた。本研究では、これを自在にコントロールできるような、新規なカゴ型構造の開閉機構の創出を目指した。具体的なカゴ型構造の骨格としては、三つのsalen型四座配位子を二つのピボット部位で連結したような多座配位子を設計した。これまでの検討で、この金属配位部位に平面四配位のニッケル(II)を導入でき、内部にグアニジニウムイオンを効率的に取り込むことを見いだしている。同骨格の配位子には、ニッケル(II)だけでなく、パラジウム(II)や銅(II)、コバルト(III)なども導入できることを見いだした。特に、八面体六配位を好むコバルト(III)イオンを導入した場合、コバルトイオン間を架橋する配位子はカゴ型構造の隙間を埋める位置に来ることになるため、ゲストの出入りを効果的にブロックできることを見いだした。
2: おおむね順調に進展している
研究計画に記載した通り、可逆な配位結合により空孔の開口部をふさいだ構造の錯体を得る手法を確立することができたため。
研究初年度は、当初の計画に沿って、可逆な配位結合により空孔の開口部をふさいだ構造の錯体を得る手法を確立することができたので、次年度以降、ゲストの取り込み速度のオン/オフ型コントロールについての詳細を検討し、効果的な物質捕捉/放出に向けた研究を進める。
当初の計画では、電気化学アナライザーは研究開始から二年目に購入予定であったが、コバルト(III)など電気化学活性なカゴ型錯体を予定より早く得ることができたため、計画を変更して初年度に電気化学アナライザーを購入することとした。これにより、より高額な装置を二年目以降に購入する使用計画に変更したため、次年度使用額が生じた。
物品費に関しては、主要な物品として紫外可視近赤外分光光度計を購入し、その他ガラス器具等消耗品に充てる。また、成果発表のための旅費として使用する予定である。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (9件) (うち招待講演 2件)
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