研究実績の概要 |
以下の項目(1)~(5)について研究を行った。 (1)直鎖状多座ホスフィン配位子の合成:四座ホスフィンmeso/rac-dpmppm, dpmppe, dpmppp及び六座ホスフィンrac-dpmppmppmの合成に成功し,これらを用いて多核金属中心の構築を行った。(2)低原子価Pd, Pt分子ワイヤーの創成:meso/rac-dpmppmを用いた直鎖上Pd8核クラスターを合成し,詳細な構造と物性を明らかにするとともに,光・電気化学特性と金属鎖に沿った伝導特性について研究を行った。また,Pd8鎖が高温ではPd4核フラグメントに解離し,低温ではそれらが自己整列する現象を昨年度見出したが,これがPd4核フラグメント間の自己不斉認識につながることを新たに発見した。(3)閉殻金属を用いた環状クラスターの分子設計と光励起物性の発現:meso/rac-dpmppmに支持されたAu4錯体がクラスター中心から強い青色発光を示し,さらにそれらが塩化物イオンによって鋭敏に消光される現象を見出した。また,直鎖状六座ホスフィンrac-dpmppmppmを用いてAu(I)及びAg(I)6核錯体を合成し,構造と光物性について研究を行った。(4)かご状銅ヒドリド多核金属集合系を用いた貴金属代替材料の開発:昨年度に引き続き銅ヒドリドクラスターの合成を行い,Cu2H, Cu4H3, Cu6H5, Cu8H6, Cu9H7, Cu16H14等様々な骨格を有する化合物の合成に成功した。これら化合物の反応性物性はその構造に大きく依存し,二酸化炭素の還元触媒や水素吸蔵の観点から研究を展開した。(5)金属集合系の拡張と集積によるナノ金属材料の創成:これまでに開発した金属集合系をメゾ空間内に拡張・集積し,新たなナノ金属材料を目指し研究を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初計画していた四座~六座ホスフィンをほぼ系統的に合成することができ,それらを用いた多核金属錯体に関する研究結果について,これまでに世界的に水準の高い学術誌Angew. Chem. Int. Ed., Chem. Eur. J., Chem. Commun., Inorg. Chem., Dalton Trans.等に発表することができた。
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