研究課題
本研究は、重・超アクチノイド元素の化学結合に寄与する相対論効果の影響を、価電子の束縛エネルギーや原子の吸着特性を測定することで実験的に明らかにすることを目的とする。平成29年度は、これまでに得られたLrの吸着エンタルピー測定実験の結果を基に、Lrの吸着エンタルピーに寄与する7p_1/2電子軌道の影響を考察し、国際会議で発表した。また、本研究で開発してきた表面電離イオン源やガスセル型イオン冷却装置をイオントラップ装置に接続し、新しいイオン化エネルギー測定法や吸着エンタルピー測定法、核物理研究手法の開発へと発展させるための基礎研究を行った。昨年度までの実験結果より、Lrの吸着エンタルピーは基底状態の電子配置7p_1/2から予想される周期表第13族元素に近い値ではなく、むしろ励起状態の6d電子軌道の影響を強く受けた第3族元素に近い値を取ることが明らかになった。この一見矛盾する結果を説明するため、Lrと比較対象となるLu及び第13族元素Tlの励起準位構造を比較し、更に吸着の際に起こる電子軌道の安定化を考慮することで、Lrの吸着では基底状態の7p_1/2軌道よりもむしろ励起状態の6d軌道の影響を強く受けることを定性的に明らかにした。現在理論研究者との共同研究により、6d軌道と7p_1/2軌道の影響を理論計算から定量的に評価することを行っており、その結果を含めた論文を準備中である。ガスセル型イオン冷却装置の開発では、今年度はこの装置で得られる低速超重元素ビームを使った様々な応用研究のための基礎研究を行った。特にイオントラップと多重反射型飛行時間測定装置を組み合わせた超重元素の精密質量測定実験のために、CmやEs標的を用いて生成される超重元素の同位体分離と崩壊測定を実施した。この結果を基に来年度低速超重元素ビームを用いた質量測定を実施する予定である。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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https://asrc.jaea.go.jp/soshiki/gr/HENS-gr/index.html