研究課題/領域番号 |
26288030
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
長谷川 靖哉 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80324797)
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研究分担者 |
中西 貴之 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30609855)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 半導体 / ナノ粒子 |
研究実績の概要 |
本研究はEuXのファラデー効果増大を目的として、EuXに磁性物質であるテルビウム(Tb)や鉄イオン(Fe)を導入するものである。これまで、Feイオンやマンガンイオン(Mn)の導入によりEuSナノ粒子の保持力向上が確認された。また、平成27年度にはテルビウムイオンを含むナノ粒子合成を検討した。この検討により、テルビウムを含むナノ粒子は3価と4価の2つの状態を有することが明らかとなった。 この研究背景を基盤として、平成28年度ではEuXとTbXが混合したハイブリッド系ナノ粒子の合成を目的として、テルビウムおよびユーロピウムが9つ含まれるクラスターを出発原料としてEuXおよびTbXの合成検討を行った。この9核クラスターは9つの希土類イオンによって構成される分子であり、その希土類イオンの混合比は自在にコントロールできる。このため、TbイオンとEuイオンを含む希土類クラスターを加熱反応することで、EuXとTbXがハイブリッド化した目的化合物を得ることができると考えられる。 この9核クラスターに用いる配位子はサリチル酸のエステル化によって合成し、その配位子を用いてEu、Tb、および比較サンプルとしてGd9核クラスターを合成した。同定は元素分析およびESI-MSによって行った。得られたTb9核クラスターは大きなファラデー効果を示すことを明らかにした。 得られたクラスターをオレイルアミンに溶解し、300℃の加熱を行うことでナノ粒子合成を検討した。この合成検討を行った結果、これまで報告されていない(XRDでは同定できない)新しい希土類ナノ粒子が合成されていることがあきらかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
EuXへの常磁性イオン導入の効果は成功し、Tbを含むナノ粒子合成にも成功した。平成28年度では本研究の最終目的であるEuX/TbXハイブリッドナノ粒子に向けた合成検討(9核クラスターを用いたナノ粒子検討)を開始し、ナノ粒子合成が可能であることを明らかにした。よって、本研究は順調に進んでいると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後はEuとTbが混合した9核クラスターを原料として、EuX/TbXハイブリッドナノ粒子合成の検討を行う。具体的には、まずEuとTbが混合した9核クラスターを合成する。同定にはESI-MSを用いる。Eu:Tb=4:5, 1:8, 8:1のクラスターを合成し、この分子を原料としてハイブリッドナノ粒子合成を行う。同定にはTRDおよびTEMを用い、光磁気機能評価にはMCD測定を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度も本研究「希土類半導体へのナノ磁気格子導入による光磁気機能増大」を継続して行う。平成28年度では新規な希土類ナノ粒子の合成検討に集中していたため、その光磁気機能の評価を行うことができなかった。このため、新規な希土類ナノ粒子の光磁気機能を評価する研究を平成29年度に行うため、その経費を次年度に使用することにした。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度(平成29年度)では新規な希土類ナノ粒子の光磁気を評価するために希土類ナノ粒子を含むポリマー薄膜を作製する必要がある。 このポリマー薄膜作製のための消耗品(試薬(ポリメタクリル酸メチル、THF溶媒など)、ガラス器具)を計画している。
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