磁性半導体EuXナノ結晶の光磁気特性はその磁気構造に影響を受ける。このEuSの内部および表面ナノ磁気構造をさらに大きく変化(強磁性的に)するためには、本質的に新しい強磁構造をEuXに導入する必要がある。本研究では、EuSナノ結晶の内部磁性を増強するために、ボーア磁子有効数の高いTb(III)に注目した。Tb(III)を含む化合物はTb2S3などが知られており、Tb(III)のボーア磁子(9.72)はMn(II)(5.92)よりも高い。これまでTb(III)から構成されるTbOFおよびTbF3ナノ粒子の巨大な光磁気特性発現に成功してきた。さらに、Tb(III)の光磁気効果を解明するため、テルビウム錯体を用いた光磁気機能の機能解析にも成功した。 最終年度ではEuSの本質的な光磁気機能を解明するため、発光機能を示すEuOナノ粒子合成を検討した。具体的には、前駆体として発光性ユウロピウム錯体の合成を検討し、そのユウロピウム錯体を光照射によってEu(II)へと光還元・加熱反応することで、EuOとEu2O3がコアシェル構造となった発光性EuXナノ粒子を合成した。これは新しい磁気構造を有する発光性のEuXナノ粒子である。また、ユウロピウムとテルビウムが混合した系を目的として、ユウロピウムとテルビウムが混合した錯体(2核錯体)の検討も行った。 さらに、これまでのEuXナノ結晶の光磁気機能研究を発展させるため、ユウロピウム金属とウレア分子との反応を行い、新しい強磁性構造を有するEuX磁性半導体 Eu(OCN)2ナノ粒子の合成に初めて成功した。このEu(OCN)2ナノ粒子は強発光機能(青色発光)と巨大な光磁気機能の両機能を発現することを明らかにした。この Eu(OCN)2ナノ粒子の研究をさらに推進することで、巨大な光磁気機能の詳細解明が可能になると考えられる。
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