研究課題/領域番号 |
26288033
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
吉沢 道人 東京工業大学, 資源化学研究所, 准教授 (70372399)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | スタッキング / 芳香環 / 分子カプセル / 超分子 / 分子認識 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、π-スタッキングを駆動力とした自己組織化により、多環芳香族分子に囲まれたナノ空間を有する柔軟な「芳香環ナノカプセル」を構築するとともに、その空間が持つ分子内包能を活用した特異な光物性の開拓と新規な光機能性材料の創出を達成することである。本年度は、昨年度までに合成した独自の芳香環ナノカプセルの機能開発に注力し、(1)炭素クラスターの水溶化と光安定化および(2)生体分子の内包と蛍光センシングに関する新たな成果を得た。その研究成果の概略を以下に述べる。
1.炭素クラスターの水溶化と光安定化:申請者が独自に開発した柔軟な多環芳香族骨格からなる水溶性の芳香環ナノカプセルを利用することで、種々の炭素クラスター(フラーレン、ナノグラフェン、カーボンナノチューブなど)を簡便に水溶化することに成功した。実際に、芳香環ナノカプセルの成分と水に不溶なフラーレンC60を固体状態で数分間、磨り潰した後、水を加えるだけで、フラーレンを内包したナノカプセルを定量的に得た。同様な手法で、水に不溶なナノグラフェンやカーボンナノチューブも効率的に水溶化できた。さらに、通常、光に不安定な炭素クラスター(テトラセンやフラーレンダイマー)が芳香環ナノカプセルに内包されることで、顕著に光安定化されることが明らかになった。
2.生体分子の内包と蛍光センシング:蛍光性を有する柔軟な芳香環ナノカプセルを利用して、非蛍光性の生体分子 モノテルペン類の内包と蛍光によるセンシングを達成した。ここでは、4つのアントラセン環を連結したテープ状の両親媒性分子の2分子集合体からなる芳香環ナノカプセルを利用した。このナノカプセルの水溶液に種々のモノテルペンを添加することで、内包によりカプセルの蛍光色および蛍光強度の変化が観測された。その数値を3次元図にプロットすることで、新たな蛍光センシングシステムを開発した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究課題として計画していた、芳香環ナノカプセルを利用した(1)炭素クラスターの水溶化と光安定化と(2)生体分子の内包と蛍光センシングを達成し、注目すべき結果が得られた。特に、これまで水溶化が困難であった様々な形状やサイズの炭素クラスターを簡便に水溶化する新たな手法を開発することが出来た。また、芳香環ナノカプセルの内包による顕著な光安定化効果や水中での生体分子の蛍光センシングにも成功した。
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今後の研究の推進方策 |
(今後の推進方策) 今年度、新たに得られた分子内包手法および光機能を基盤に、来年度はより巨大な金属錯体や金属クラスターの内包とその性質について検討する。また、より詳細な分光解析を行い、光機能に関して分子レベルでメカニズムも解明する。さらに、外部刺激応答性の芳香環ナノカプセルによる分子内包と放出を達成する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は基礎実験を中心に研究を行ったため、次年度の使用額が生じた。来年度は応用研究を中心に、合成や分析実験のスケールを上げて研究を行う。
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次年度使用額の使用計画 |
残額は、試薬の購入費および装置の消耗品、学会参加費に充てる。
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