研究課題
低温相で電荷秩序が形成される多重不安定性物質(EDO-TTF)2PF6[以降、母物質と呼ぶ]の光誘起相転移挙動の詳細を検討するため、ドナー分子のメチル置換誘導体MeEDO-TTFを含む混晶について検討した。母物質中のEDO-TTFの内、11%をMeEDO-TTFに置換した場合、母物質と同形構造を持つランダム置換型混晶が得られた。この混晶の低温相では電荷秩序が形成されずPeierls転移による絶縁体化が見られる。この低温相にパルス光を照射すると、1 ps桁の寿命を持つ非平衡・短寿命の金属状態を経て、比較的寿命の長い高温相に類似した金属状態に移行する事が判った。この光誘起過程は、母物質で見られた揺らいだ電荷秩序状態(光誘起相)を経由する逐次的な応答とは異なり、僅かな結晶構造の違いが光誘起過程を大きく変えることを示している。また、EDO-TTF誘導体の検討を行う中で、ヨウ素置換EDO-TTFの塩においてヨウ素結合による結晶構造の安定化が見られた。別研究グループによる研究例とも照らし合わせ、この弱い分子間相互作用の結晶構造制御に対する有用性を再確認できた。昨年度に続き、陰イオン部位を持つTTF誘導体を成分とする電荷秩序物質の開拓を行った。昨年度まではカルボキシ基4個を持つ誘導体を扱っていたが、本年度はTTF核のドナー性を向上させるため、カルボキシ基を2個持ち、内ひとつがイオン化し、分子全体としては-1価となるTTF誘導体を用いた塩の開拓を行った。本報告段階でアルキル置換TTF誘導体と2種の錯体を得ている。EDO-TTF誘導体を主とする物質開拓と並行し、強力な還元剤を用いてフラーレンやフタロシアニン誘導体の陰イオンを発生させ、それらの結晶性の塩について電子状態を検討した。それらの中で、C60陰イオンラジカルが正三角形の格子を組み、スピンフラストレーションの見られる塩が得られた。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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