研究実績の概要 |
本研究の目的は、気体の種類や圧力によって、発光色が変化する多重発光性センシング膜を開発する。異なる発光色(青色、黄色、赤色)を示す異種の金属錯体からなる層を人工積層し多層膜を製造する。膜中への気体の侵入程度によって消光される錯体が変わり、その結果、加算される発光色が気体の圧力や種類によって変化する。さらに、錯体間で起こるエネルギー移動を、表面密度や挟み込む粘土ナノシートの層数を変えることによって制御し、光エネルギーの効率的集約を実現することである。 本年度は2種類の異なる発光波長をもつ陽イオン性の両親媒性Ir(III)錯体と合成サポナイトとのハイブリッドLB膜から、水平方向や垂直方向おけるエネルギー集約を調べた。 陽イオン性イリジウム(III)錯体として, 陽イオン性の[Ir(piq)2(dc9bpy)]+(赤色発光)、[Ir(fppy)2(dc9bpy)]+(緑色発光)(ここでpiqH=1-phenyisoquinoline, dc9bpy = 4,4’-dinonyl-2,2’-bipyridine, dfppyH = 2- (2’, 4’-difluorophenyl)pyridine))などを合成した。粘土鉱物としては合成サポナイトを用いた。2種類の異なる発光色を示すイリジウム錯体のLB膜におけるエネルギー移動の検討をおこなった。その結果、合成サポナイトをしきりした2層膜においても緑色発光(ドナー)から、赤色発光(アクセプター)へとエネルギー移動が起こることがわかった。これらより、積層膜の垂直方向へのエネルギー移動によっても赤色発光強度の増大が起こることがわかった。人工積層法によって、垂直方向における両者の膜の距離を変えたところ、エネルギー移動効率が小さくなることがわかった。これらの結果からフェルスター型エネルギー移動モデルを提案した。
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