研究実績の概要 |
近年、ナノ集積体に関する研究が急速に発展している。このようなナノ集積体は、大きな比表面積を持ち、さらに微粒子とは異なりその分子配列が制御されているので、既存の有機材料には無い優れた特徴を持つ。申請者は、有機π電子系材料およびその有機金属化合物とのハイブリッド材料を用いて、新しい超分子機能材料の開発を研究してきた。また、申請者は、ナノサイズの非常に大きな分子を合成して、その単分子としての機能および超分子会合体のナノ特性を研究してきた。本申請ではこれらの研究をさらに進めて、有機π電子系を使って新しいナノ集積体を構築し、ナノサイズ効果および超分子配列を使って新しいナノ物性を発現させると共に、ナノ集積体をマテリアルサイエンスの鍵物質として利用する基礎を築くことを目指した。先ず、大きな共役π電子系化合物を用いる共役ナノドット、ナノファイバーなどのソフト構造体の構築とそれらのハード材料への接合の制御であるが、この研究に関しては、グラファイト表面に1,3,5-ベンゼントリカルボン酸の格子を作り、その上に土星型大環状オリゴチオフェン・C60錯体を配列させることによって整流作用をもつ二分子膜を作成して、その単分子機能を調べた。また、機能性ナノファイバーの構築に関しては、大環状オリゴチオフェンが有機溶媒の蒸気によってベイポクロミズムを示すと同時に、形態変化を起こして動くという現象も見出した。さらに、土星型環状オリゴチオフェン・C60錯体を用いる新規分子素子の構築については、各種土星型環状オリゴチオフェン・C60錯体を合成して、その光誘起電流の測定とスイッチ機能を調べ、光照射下では暗所に比べて約40倍電気伝導度が高くなることを見出し、分子素子の構築に向けた基礎を完成させることができた。
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