研究実績の概要 |
構造・電子的に適した電荷種(イオン)を設計・合成し、その間にはたらく相互作用を制御することによって、電荷的に中性なユニットからなる集合体を凌駕した物性を発現する電子機能マテリアルの展開が可能になる(総説としてBCSJ 2018)。本年度は、電荷を有するπ電子系の合成および集合化を中心に検討した(複数報の論文を投稿中)。たとえば、π電子系に導入した酸ユニットの脱プロトン化によるπ電子系アニオンの形成を試み、十分な安定性が必要であることを明らかにした(Dalton Trans. 2017, J. Org. Chem. 2017)。また、酸ユニットの脱プロトン化によるアニオン部位を水素結合によって安定化したπ電子系のπ共役系拡張に成功し、イオンペア集合体からなる液晶中間相を形成した(Chem. Eur. J. 2018)。光応答性を付与したπ電子系アニオンを合成し、光応答による可逆的な結晶-結晶転移挙動を見出した(Chem. Eur. J. 2017, Chem. Lett. 2018)。さらに、イオン会合能を有するπ電子系を合成し、そのイオン会合挙動および次元制御型集合体への展開を行い、水素結合部位の導入による高い会合能の発現およびイオンペア集合体の形成(Chem. Eur. J. 2017)を報告した。一方、水素結合を駆動力とした分子集合化を基軸とした液晶中間相の創製も行った(Chem. Lett. 2018)。π電子系分子の結晶多形に関わる形成過程(Chem. Eur. J. 2018)や導電性(Org. Electron. 2017)に関する詳細な検証を共同研究で実施した。
|