研究課題/領域番号 |
26288043
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
松永 茂樹 東京大学, 薬学研究科(研究院), 准教授 (50334339)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 有機金属 / 触媒 / 生物活性化合物 / 複素環 / 立体制御 |
研究実績の概要 |
初年度にあたる平成26年度においては、まず一電子の可逆的授受が可能な各種錯体の合成方法についての検討を徹底して実施した。その結果、当初、想定した錯体のうち、合成し単離可能なものと、単離することができない程不安定なものがあるということが判明した。一方で、単離可能な程、安定な錯体については、当初より想定していたように反応性が低くなってしまうということがわかった。実際に、モデル基質として設定したベンジル位のC-H結合は比較的切断が簡単であると想定されるものの、単離可能な錯体では切断が起こらないという結果になった。そこで、これらの予備的な成果を踏まえると、単離可能錯体に限定して検討を行ったのでは所望の反応性が獲得できないことから、今後は単離できない錯体、あるいは、活性種を一電子酸化あるいは還元剤などを利用しつつ発生させ、さらにそこからの反応を検討する必要があるということになる。以上の結果は、当初想定していた範疇であり、今後、活性種の系中発生という手法を駆使することで解決できる可能性が高いと考えている。これらの知見を踏まえ今後の研究を押し進めていく。
また、今後の検討をスムーズに進めるためには、一電子の可逆的な授受が可能な各種錯体についての反応についてはより広汎な基質をターゲットにして検討していく必要があると想定される。具体的には、インドリンからの脱水素反応などを新たに検討課題として加え、検証を重ねていく予定である。当初計画のベンジル位の切断と比較し、さらに反応が起こりやすく、錯体の評価系としては最適ではないかと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
錯体の合成とその反応性についての基礎的な知見を収集することができた。単離可能な錯体の反応性については、それほど高くないことがわかったが、これは当初よりある程度想定していた状況である。今後は、初年度に得た知見をもとにより広範囲に検討対象を広げて研究を実施することで新しい触媒活性の獲得につなげられるものと期待している。
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今後の研究の推進方策 |
触媒活性が想定していた範囲の中では、かなり低いレベルであることがわかってきたので、今後は、触媒活性を調べる対象となるモデル反応を当初のものだけではなく、インドリンの脱水素反応などさらに広汎なものとし、引き続き検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
一電子の授受が可能な触媒を各種合成し、評価した結果、単離可能な触媒については十分な活性がないことが判明した。そのため、当初想定よりも評価を実施する回数が減り、調査対象を拡張して27年度に検討を行うための準備に時間を要したため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度には、調査範囲を拡張して各種錯体の反応性を調べるため、当初の計画以上に物品費が必要となり、次年度使用額分をあてることでまかなう予定である。
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