研究課題/領域番号 |
26288044
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
西林 仁昭 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40282579)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 窒素固定 / アンモニア / 窒素ガス / モリブデン / 鉄 |
研究実績の概要 |
研究課題の一つである「温和な反応条件下でのアンモニア合成反応の開発」については飛躍的に研究が推進した。 窒素架橋2核モリブデン窒素錯体を触媒として用いた窒素ガスからのアンモニア生成反応の詳細な反応機構を明らかにすることに成功した。当初の予想に反して、窒素架橋2核モリブデン部位が保持された状態で触媒反応が進行する画期的な反応機構であることを、実験結果及び理論計算による検討により明らかにした。また、この反応機構解明の知見を踏まえて、PNP型ピンサー配位子に電子供与性基を導入することで、大幅な触媒活性の向上に成功した。特に、メトキシ基を導入することで、触媒当たり最高52当量のアンモニア生成に成功した。 フェロセニルジホスフィンを配位子として有する窒素架橋2核モリブデン錯体の合成に成功し、その特異な反応性についても明らかにすることに成功した。光照射下で、窒素架橋2核モリブデン錯体上の架橋窒素分子の窒素―窒素三重結合の開裂が進行し、対応する2当量のモリブデンニトリド錯体が生成することを明らかにした。興味深いことに、モリブデンニトリド錯体からアンモニアが生成することも確認できた。これは光エネルギーを利用した窒素固定が実現可能であることを示す極めて興味深い成果である。一方、生成したモリブデンニトリド錯体を酸化すると、元の窒素架橋2核モリブデン錯体を再生することも同時に明らかにした。これらの結果は、2つのモリブデン間に架橋した窒素分子が可逆的な開裂と生成を起こせることが実現出来たことを示す極めて興味深い研究成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究課題の一つである「温和な反応条件下でのアンモニア合成反応の開発」については飛躍的に研究が推進したため。特に、触媒的なアンモニア合成反応の開発については、触媒活性の大幅な向上が達成できた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに達成した知見を踏まえて、研究課題の一つである「温和な反応条件下でのアンモニア合成反応の開発」について更に詳細な検討を行う。また、当初の平成27年度以降の計画について検討を行う。 4.電気化学的還元手法を用いた触媒的アンモニア生成反応の開発 PNP型ピンサー配位子を有するモリブデン窒素錯体は、常温常圧下での窒素ガスからの触媒的アンモニア生成において、窒素分子の還元に必要な電子は化学試薬であるコバルトセンから供給する必要があった。この反応系中で、還元反応に用いた後に系中で生成するコバルトセニルカチオンを電気化学的手法により還元力を有するコバルトセンに還元して再生することで繰り返し利用できれば、電気エネルギーを物質エネルギーへと変換する方法の開発が達成可能となる。電気化学的還元手法を用いた反応系の開発には、現在の反応系で用いている電気伝導性が低い無極性溶媒であるトルエンの代わりに、電気化学的手法が利用可能な電気伝導性が高い極性溶媒を用いる必要がある。しかし、現在の反応系では、通常の極性溶媒は窒素錯体の生成を妨げる原因の一つであることが知られている。この問題を解決するために、窒素錯体と共存可能で、電気化学的手法が利用可能で高い電気伝導性を有するイオン液体を溶媒として用いて電気化学的手法による反応系の開発に取り組む。 5.アンモニアの触媒的分解反応における鍵過程の開発 金属と窒素間に三重結合を有するニトリド錯体の二量化による窒素架橋二核錯体の生成反応は、アンモニアを燃料電池の原料として利用する反応開発における鍵反応の一つである。得られた化学量論反応に関する知見を基に、触媒的アンモニア分解反応の開発に取り組む。触媒化達成に必要な鍵反応の一つであるニトリド錯体から架橋窒素錯体が生成する化学量論反応の反応機構を詳細に検討し、触媒的アンモニア分解反応の開発に必要な知見を得る。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究期間の前半では、研究に携わる人材を確保することができなかったために、これに伴う物品日及び人件費等の使用を次年度に持ち越した。
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次年度使用額の使用計画 |
既に人材の確保に成功しており、平成27年度は速やかな研究の遂行が期待できる。
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